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社説・コラム

天風録 『迫力ある言葉』

 似たような言葉が並んでいても、比べると特徴が見えてくる。首相による毎年9月の国連総会演説も、その一つだ。2009年は直前の政権交代を受け「新しい日本」という言葉に迫力があった。東日本大震災の年は、支援国への感謝が聞かれた▲17年も印象的だった。北朝鮮問題に「集中せざるを得ない」と切り出し、核開発を放棄させるため「必要なのは対話ではない。圧力だ」と言い切った。数日後、「国難突破」と称して衆院を解散、総選挙の道を開いた▲そんなふうに時代を画した年もあるが、今年は期待外れ。新たな要素はウクライナ侵攻のロシア批判ぐらい。人間の安全保障をはじめ、以前からの懸案が目立つ。岸田文雄首相肝いりの「核なき世界」も具体策に乏しく迫力を欠く▲外交にばかり力を入れているように映るのは、政権の足元がおぼつかない証しかもしれない。「地価・物価 下がるは支持率ばかりかな」。川柳まがいの言葉が浮かぶほど局面は厳しい▲不信を増大させたのは、国民の声を聞いていないからだろう。なぜ内閣葬でなく、国葬なのか。社会問題化した教団との縁は切れるのか。迫力ある言葉で、疑問を解消するしか打開できまい。

(2022年9月22日朝刊掲載)

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