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社説・コラム

天風録 『スカーフと大統領』

 髪を隠すスカーフを着用しないと、インタビューには応じられない―。イラン大統領は、補佐官を通し、そんな要求を無理強いしてきた。「ここはニューヨーク。着用に関する法律も伝統もない」。米のジャーナリストが丁重に断ると、取材はドタキャンに▲歴代のイラン大統領で、国外でのインタビュー相手にスカーフ着用を求めた人はいないそうだ。ごりごりの保守強硬派で知られた先々代でさえ、そうだった。よほど質問されたくないことが現大統領にはあるのだろう▲それもそのはず、国内では今、抗議デモが燃え盛る。スカーフのかぶり方が不適切だと警察に拘束された女性の死亡で火が付いた。暴行されたとの疑いが広がっている▲あろうことか、イラン政府はデモ抑え込みだけではなく、隣国イラクにある反イラン武装勢力の拠点攻撃にも乗り出した。デモの背後に、反体制派がいると見ているようだ。国際紛争にまで発展しないか、不安が募る▲昨年の大統領選で穏健派から保守派に交代し、スカーフ着用といった伝統を守るよう締め付けを強めてきた。ただ無理強いは反発を招くだけ。人々の声を聞かぬ、こわもて政権は古今東西、長続きしないのだが。

(2022年9月26日朝刊掲載)

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