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がん細胞 被爆者のゲノム解析着手へ 来春にも原医研

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)は来春にも、被爆者のがん細胞の全遺伝情報(ゲノム)の解析に着手する。放射線の影響で細胞ががんに変異するメカニズムを解明し、効果的な治療法を探るのが狙い。

 被爆でがん発症の確率が高くなることは確認されているが、染色体がどのように傷つき、がんを引き起こすのかは分かっていない。原医研は、最先端のゲノム解読装置「シーケンサー」を本年度中に購入し、同大大学院医歯薬学総合研究科と共同で研究を進める方針でいる。

 原医研によると、広島大病院の患者や被爆者団体に協力を呼び掛け、がんを患った被爆者からがん組織の提供を受け、正常な組織のゲノムと比較する。被爆者と、そうでない人とのがん発症の仕組みの違いが判明する可能性があるという。

 ゲノム解析には倫理上の問題も指摘されるため、被爆者には十分に説明し、同意を得たうえで、第三者機関「倫理委員会」の了承を経て実施する。

 神谷研二所長は「遺伝子情報に応じた薬を投与するなど『オーダーメード医療』への応用も期待できる」としている。

(2009年6月26日朝刊掲載)

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