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連載・特集

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <9> 初のアフリカ単身赴任

豊かな自然・文化息づく

 アフリカの国々の中でも、ケニアの名前はきっとご存じでしょう。一体どのような国でしょうか?

 私は2016年7月、ケニアの首都ナイロビに着任しました。アフリカへの出張は何度か経験していたものの、外務省生活36年目、58歳にして初のアフリカ大陸への単身赴任です。

 着任して最初の仕事は8月末に現地で開催された「第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)」への対応でした。この開発会議は日本政府主導で1993年から開かれ、国連や国際社会にアフリカの開発を広く呼び掛けてきた取り組みです。その海外初の会議がナイロビで開かれたのです。

 日本とケニアの交流の深さは政府開発援助(ODA)の分野で顕著です。東アフリカ地域で最大のモンバサ港を擁し、周辺諸国への玄関口として地域経済の中心的な役割を担うケニアは、サハラ砂漠の南に位置する49の国の中で、わが国からのODAの最大の被供与国です。

 日本からの支援はインフラ整備や農業、衛生、教育、地熱発電などさまざまな分野で活用されています。このような環境の中で多数の日本企業がケニア経済の発展に貢献しています。

 また、ケニアには豊かな自然が残り、多くの野生動物が生息しています。国土は日本の約1・5倍。多数の国立公園や動物保護区があり、ガイドの案内で四輪駆動車に乗り、観光できるのも大きな魅力です。

 中でも、タンザニアとの国境に位置し大阪府と同規模のマサイマラ国立保護区は最も有名です。私も2018年5月、短期間訪れた妻とこの保護区を巡りました。ライオンや象など次から次へと現れる野生動物の姿はとても美しく、印象的でした。

 ところで、ケニア人はどんな人たちでしょうか。

 人口約5千万人は42ほどの部族から構成され、おのおのが独自の言語と文化、習慣を持っています。従ってナイロビなどの都市部を除き、ケニア国内の各地域で生まれた子供たちはまず両親の話す部族語を聞きながら育ちます。

 成長して学校生活や周辺地域との交流が始まると、東アフリカ諸国で広く話されているスワヒリ語が部族間の共通語として必要となります。さらに歴史的な事情もあって英語も広く話されることから、スワヒリ語と英語が公用語となっているわけです。

 こうして19年12月までの3年半駐在したケニアで私は貴重な経験ができました。特に、さまざまな分野で活躍する魅力的な方々と接することができたことを幸運と感じています。

かたやま・よしひろ
 1957年、広島市佐伯区生まれ。廿日市高校を経て立命館大経済学部卒。80年外務省入省。ルーマニア、米ニューヨーク、ウクライナ、ケニアなどの大使館、総領事館で勤務。外務本省では地球環境問題や海賊対策を含めた海洋問題なども担当した。2020年2月から現職。被爆2世。

(2021年4月25日朝刊セレクト掲載)

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