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安倍元首相国葬 「最長の宰相」「なぜ英雄視」 お膝元 山口県内でも賛否

 山口県選出の安倍晋三元首相の国葬が執り行われた27日、県内の全19市町は半旗を掲げて弔意を示した。県民はテレビ中継を見ながら追悼する一方、国葬に反対する集会も開かれ、安倍氏のお膝元でも国葬の賛否が分かれた。

 岩国市は雨が降りしきる開庁前、市役所に国旗の半旗を掲げた。同市美和町の農業宮本昭義さん(79)は「安倍さんのおかげで道路が整備され、経済政策のアベノミクスが国民の仕事のやる気を引き出したと思う」と憲政史上最長の宰相を惜しんだ。

 原発の建設計画がある上関町。計画を支持する古泉直紀さん(64)は「これからも町を支えてほしかった。偉大な政治家を突然失い、今も悔しくてならない。日本のために長年尽くし、国葬で弔うのは納得できる」と悼んだ。

 岩国市と山口市では、市民団体などが国葬に反対する集会を開いた。岩国市の西本勢津子さん(63)は「国葬は憲法19条の内心の自由に違反する。なぜ賛否が分かれる国葬を国民に押し付けるのか」と憤る。伯父が戦死した山口市の無職伊藤早苗さん(70)は「安保法制を強行した安倍元首相をなぜ英雄視しないといけないのか」と疑問視した。

 国葬を営む法的根拠が不明確とする意見も根強い。岩国市の自営業柳川顕児さん(38)は「功績のある安倍さんを悼みたいが、自民党は改憲すると言いながら法に基づかずに手続きを軽んじた」と残念がった。

「功績思い浮かべた」 参列の首長 率直に弔意と感謝

 県内の市長たちが安倍晋三元首相の国葬に参列し、哀悼の意をささげた。

 県市長会長の井原健太郎・柳井市長は「県内13市の代表として、安倍元首相の姿や功績を思い浮かべながら安らかにお休みくださいと祈った」という。賛否が分かれた国葬の在り方については「国が今後しっかり検証し議論していくのではないか」と話した。

 元衆院議員(山口2区)の福田良彦・岩国市長は米軍岩国基地などの課題について長らく助言を受けてきたとし「菅義偉前首相の追悼の辞を拝聴し、心の奥にこみ上げるものを感じた。率直に弔意と感謝を表し、心静かに参列させていただいた」と打ち明けた。

 下松市の国井益雄市長も「海外からの参列者も多く献花の列に圧倒された。それだけ功績を残された人であると実感している。凶弾に倒れられ無念だったと思う」と心を寄せた。周防大島町の藤本浄孝町長は「安倍元首相は地方創生に力を入れてこられた。地域づくりへの思いを新たにすることができた」と述べた。

 県内の19市町のうち11市町長に国葬の案内状が届き、10市町長が出席すると返信していた。

(2022年9月28日朝刊掲載)

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