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連載・特集

モルドバ大使からの報告 片山芳宏 <14> 国際機関への招待

知識生かせる分野多彩

 かつて赴任していたケニアの首都ナイロビは、東アフリカ地域の主要都市です。同時に、国連関連をはじめさまざまな国際機関の拠点という、もう一つの表情を持っています。

 市内から車で30分ほどの丘陵地にある広大な敷地に、多数の国際機関がアフリカ大陸での活動を統括する事務所を置いています。国連環境計画(UNEP)と国連人間居住計画(国連ハビタット)の両機関の本部もここにあります。

 2016年7月から3年半にわたる駐在期間中、ナイロビの国際機関で活躍する日本人と出会い、ともに働けたことは自らの貴重な経験になりました。

 みなさんは世界各国から集まった専門家たちと働いています。一人一人がとても魅力的で、自宅での会食に招いては興味深い話を聞かせてもらったものです。

 特に印象的なのはみなさんの経歴の多様さです。大学や大学院卒業後に日本国内の民間企業で働いたり、公務員を務めたり。あるいは教員や研究職などで実務を積んだ後、国際機関に進んで活躍しています。

 UNEPで海洋生態系の保全と復元を担当する広島市出身の中村武洋さんもその一人。オゾン層保護推進事務局トップの妻めぐみさんとともに、地球環境保護の分野に貢献しています。近年ナイロビでもほぼ毎年開かれる「原爆展」は、私と同じ被爆2世の武洋さんが中心になって準備を進めています。

 さて、読者のみなさんの中にも国際舞台での仕事を目指す方がいらっしゃると思います。「世界の国際機関の4拠点」は、米ニューヨーク、スイス・ジュネーブ、オーストリア・ウィーン、そしてケニア・ナイロビです。これらにある機関をはじめ、さまざまな国際機関が専門知識を身につけたり、働いたりした経験を持つ人材を求めています。その分野は開発、人権・人道、教育、保健、平和構築、IT、法務、財務、広報、環境、理工学、農業、薬学、建築、防災など多岐にわたります。

 国際機関での活躍を夢見て、そのきっかけを探すみなさんに、お薦めの窓口が二つあります。まず「国際連合広報センター(東京)」です。根本かおる所長は、彼女がケニアに出張で訪れた際に知り合いました。根本所長は日本国内で報道分野に従事された後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や世界食糧計画(WFP)などで活躍。13年から広報分野の責任者として、国連が取り組むさまざまな活動を積極的に発信しています。

 もう一つは外務省の「国際機関人事センター」です。例えば35歳以下の日本人に対し原則2年間国際機関での勤務経験を積む機会を提供するJPO派遣制度などをはじめ、外務省は各種のサポートを行っています。能力や経験を使って国際社会への貢献を目指す古里の若人のみなさん。ぜひ夢に挑戦してください。

かたやま・よしひろ
 1957年、広島市佐伯区生まれ。廿日市高を経て立命館大経済学部卒。80年外務省入省。ルーマニア、米ニューヨーク、ウクライナ、ケニアなどの大使館、総領事館で勤務。外務本省では地球環境問題や海賊対策を含めた海洋問題なども担当した。2020年2月から現職。

(2021年9月26日朝刊セレクト掲載)

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