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鐘の音に平和願う 甲奴の吉井住職 初打ちへ あす米で鐘楼落成式

 三次市甲奴町小童の正願寺の吉井祥道住職(74)が29日、カーターセンター(米ジョージア州アトランタ市)で30日(日本時間1日)にある鐘楼の落成記念式典に出席するため出発した。同寺から戦時中に供出され、同センターにたどり着いた鐘を鳴らせるよう鐘楼建造に尽力。式典での初打ちを前に、「平和を象徴する鐘の音を世界に響かせたい」と話した。

 鐘はセンターで台座に置かれて展示されてきた。10年ほど前から吉井住職たち有志が、「何とか鐘をつり下げ鳴らせる状態にできないか」と取り組んできた。

 戦時中、正願寺にあった鐘は供出され、戦後に英国から米国へと渡った。1985年にアトランタ日本商工会議所などが買い取り、地元のジミー・カーター元大統領(97)に寄贈。その縁でカーター氏は90、94年に同町を訪れた。

 吉井住職はカーター氏に手紙を送り、鐘楼の建造をお願いしてきた。建造が決まった昨夏からは、町民でつくるプロジェクト支援実行委員会の一員として、材木の調達や寄付を募る活動を続けてきた。

 今年8月、先に渡米した同町の大工たちと現地スタッフの手で鐘楼が完成した。同センターで催される式典で最初に鐘を突く予定の吉井住職は「町民や実行委の平和への思いが形になった。鐘の音を通じて、その思いを感じてほしい」と語った。(千葉教生)

(2022年9月30日朝刊掲載)

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