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連載・特集

アフガニスタンの未来仏 青の弥勒 <下> 平山郁夫「破壊されたバーミアン大石仏」2003年

戒めに「負の遺産」提唱

 平山郁夫が最初にアフガニスタンを訪れたのは1968年のことである。初めて見る高原と砂漠の国の空気は澄み、爽やかで、人々は素朴だった。しかし79年に旧ソ連が軍事侵攻。89年には撤退したが、部族間の対立抗争が激化し内戦が続くこととなる。

 90年代にはイスラム原理主義のタリバンが台頭し、2001年にはバーミアン大石仏の爆破を予告した。平山郁夫は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)を通じて爆破の反対声明を出したが、東西の大石仏をはじめとした歴史遺産は破壊されてしまった。

 02年8月に平山はバーミアンを訪れ、破壊された東西の大石仏を描いた。本作は、その時のスケッチを基に西大仏の無残な姿を作品にしたものである。

 破壊された大石仏を元の姿に戻すように主張する識者もいたが、平山は、人々が二度と同じあやまちをおかさないよう人類の「負の世界遺産」として残すことを提唱した。それは、原爆ドームを「負の世界遺産」として世界遺産に登録する活動に尽力をした平山ならではの主張であった。(平山郁夫美術館学芸員・幸野昌賢)

 <メモ>開館25周年記念「アフガニスタンの未来仏 青の弥勒」展は尾道市瀬戸田町の平山郁夫美術館で11月27日まで。同館と中国新聞備後本社などの主催。会期中無休。一般1200円、高大生410円、小中生210円。同館☎0845(27)3800

(2022年10月3日朝刊掲載)

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