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平和の鐘楼 完成祝う 米で式典 三次市訪問団が出席 甲奴の住職 願い込め突く

 戦時中に三次市甲奴町小童の正願寺から供出され、現在はカーターセンター(米ジョージア州アトランタ市)にある鐘をつるす鐘楼の落成記念式典が9月30日(日本時間1日)、現地であった。三次市の公式訪問団が出席し、ジョージア日米協会など支援した関係者約500人と祝った。日米友好を象徴する「平和の鐘」。式典で同寺の吉井祥道住職(74)が願いを込めて突いた。(千葉教生)

 ジミー・カーター元大統領(98)ゆかりのセンター一角を彩る日本庭園で行われた式典には、現地の日本総領事館や経済団体の関係者も並んだ。福岡誠志市長は「鐘楼は長い間、三次市民の願いだった。鐘が平和のシンボルとして愛され続け、日米をつなぐ懸け橋になると確信している」とあいさつ。その後、吉井住職が落慶法要を執り行い、厳かに鐘の音を響かせた。

 軍需物資として供出された鐘は戦後、英国を経て米国へ渡った。1985年にアトランタ日本商工会議所などが買い取り、カーター氏に寄贈。同センターで「平和の鐘」として台座上で展示された。鐘の縁でカーター氏は90、94年に旧甲奴町を訪問。95年にはカーター氏の出身地に近い同州アメリカス市と旧町が姉妹都市となり、相互訪問などを通じて親交を深めてきた。

 鐘楼実現へ町民有志が動き出したのは約10年前。昨夏、プロジェクト支援実行委員会をつくって材木の調達や寄付を募り、今夏には木造瓦ぶきで高さ約4メートルの鐘楼建築に大工を派遣するなどして後押しした。

 式典では、同町の児童生徒や町民の動画メッセージが流れた。「98歳おめでとうございます」「またお会いするのを楽しみにしています」。実行委が、鐘楼完成の喜びとともに、1日が誕生日のカーター氏への思いをまとめた3分間のビデオで、会場は温かいムードに包まれたという。

 訪問団は式典前にアトランタ市の日本総領事館を訪問。今後、アメリカス市も訪れ、4日に帰国する。

(2022年10月2日朝刊掲載)

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