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連載・特集

アフガニスタンの未来仏 青の弥勒 <上> スーパークローン文化財「青の弥勒」 2021年復元 東京芸術大COI拠点

 尾道市瀬戸田町の平山郁夫美術館で、開館25周年記念「アフガニスタンの未来仏 青の弥勒(みろく)」展が開かれている。復元されたバーミヤンの石窟の天井壁画など3点を幸野昌賢学芸員に解説してもらう。

最先端技術で菩薩今に

 古来より聖なる石とされてきたラピスラズリ。その神秘的な青には、特別なエネルギーが秘められているとされる。「美しい未来へつなぐ力」である。

 アフガニスタン・バーミヤンの石窟にはラピスラズリを砕いた絵の具で彩色した天井壁画があった。仏教の世界観における「未来」を象徴する仏―弥勒菩薩(ぼさつ)が描かれていた。それが「青の弥勒」である。

 弥勒菩薩は釈迦(しゃか)の入滅後56億7千万年後に降りてきて、釈迦に代わってこの世の人々を救う未来仏とされる。「青の弥勒」はその美しさから「麗しの菩薩」とも呼ばれ、多くの人々の信仰を集めていたが、アフガニスタンの相次ぐ戦乱の中で失われてしまった。

 東京芸術大COI拠点は、最先端のデジタル技術と伝統的な技術を組み合わせて「青の弥勒」の再現に挑んだ。1970年代に京都大の調査団が撮影した1万5千点にのぼるフィルムや、東京文化財研究所に保管されるフィルムをコンピューターで解析し、3Dデータを作成。その上でラピスラズリをはじめとした同じ素材の絵の具を使用し、手彩色の技術を駆使して再現した。

 美しいラピスラズリで描かれた弥勒菩薩は、戦乱が続く世界における未来と希望の象徴である。

 <メモ>11月27日まで。同館と中国新聞備後本社など主催。会期中無休。一般1200円、高大生410円、小中生210円。同館☎0845(27)3800

(2022年10月1日朝刊掲載)

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