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被爆後の「温品印刷」回顧 本紙元社員が証言ビデオ制作

 1945年8月の原爆投下後の一時期、中国新聞社が広島市郊外の温品村(現在の東区温品地区)で新聞を印刷した歴史を伝えようと、元社員が証言ビデオを制作した。当時を記憶する地域の高齢者を取材し、16分の映像にまとめた。

 タイトルは「輪転機が語る16日間の苦闘 中国新聞」。原爆で上流川町(現中区胡町)の本社の輪転機2台を失い、温品の牧場に疎開させていた輪転機1台で新聞を印刷した「温品工場」の記憶をたどる。社員がテント生活をしながら9月3日付から新聞印刷を再開し、同17日の枕崎台風で被災するまでの記憶を、関係者の証言や今の現地の映像を交えて振り返る。

 取材に応じた谷口敏明さん(88)は「新聞の印刷工場とは知らずに遊びに行き、床にこぼれていた活字を拾って名字の印鑑を作った」。大本進一さん(84)は「社員が川で写真の印画紙を洗っていたのを覚えている」と懐かしむ。

 取材したのは元社員でアマチュア映像作家グループ「広島エイト倶楽部(くらぶ)」で活動する松田治三さん(86)と佐々木博光さん(87)。被爆77年のことし、「生の証言を得られるうちに」と企画した。松田さんは「わずかな期間ながら温品での新聞発行が復興を支えた歴史を知ってほしい」と願う。

 映像は11月2日午後1時からコジマホールディングス西区民文化センターである上映会で披露する。入場無料。(馬場洋太)

(2022年10月6日朝刊掲載)

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