×

連載・特集

続 年金もらい忘れていませんか? 柴田友都 <1> 旧軍施設に勤務 受給諦めないで

 昨年10~12月の中国新聞朝刊くらし面での連載「年金もらい忘れていませんか?」は反響が大きく、これまでに約700件の年金相談をいただいています。調査の結果、戦時中の年金をようやく受給できたケースもあります。福山市のE夫さん(91)はその一人です。

 E夫さんは戦時中、呉市の呉海軍工廠(こうしょう)の技術部専門学校を修了し、終戦まで同工廠で働いたとのこと。戦後、厚生年金に5年間加入しており、受給要件を満たしていました。同工廠で働いた記録が見つかれば、当時の年金がもらえます。旧陸海軍施設の年金は手続きが難しいのですが、過去500件以上の請求に結び付けてきた経験を生かし、調査を引き受けました。

 まず調査書類をE夫さんに送り、返信に同封されていた厚生年金手帳の写しで受給記録を確認。さらに履歴申立書を送り、分かる範囲内で記入していただきました。この履歴申立書を基に当事務所で申請書類を作成し、日本年金機構に提出したのです。

 年金相談から半年後の今年5月、呉海軍工廠で働いた1944(昭和19)年4月~45年8月の17カ月分の年金記録が認められ、約130万円が入金されました。「思いもしない年金が振り込まれて驚いています」とE夫さん。うれしそうな声を電話で届けていただきました。

 旧海軍工廠などの年金記録を調査し、受給が確定するまで通常10カ月から1年かかります。E夫さんの場合、手続きがスムーズに進みました。

 戦時中、呉海軍工廠のほか、広島陸軍被服支廠(現広島市南区)や宇品陸軍糧秣(りょうまつ)支廠(同)で働いた人はいませんか。本人が他界していても遺族が年金を受け取れます。受給要件は厚生年金に1年以上加入しているか、退職共済をもらっているかです。これまで年金事務所の職員に「もらえない」と告げられた人も諦めないでください。(年金コンサルタント)

    ◇

 「もらい忘れ年金」の相談は、計10回にわたった昨年の連載後、柴田友都さん(74)の元に今も中国地方から寄せられている。調査を進め、受給につながったケースは約70件という。主な事例について、柴田さんに紹介してもらう。

しばた・ゆういち
 1948年東京都生まれ。金融機関勤務を経て96年、産友社会保険労務士事務所を開設。全国で請求漏れ年金の調査を進め、受給につなげたケースは5千件に上る。埼玉県川口市在住。

柴田さんの連絡先 〒333―0802埼玉県川口市戸塚東4の25の4、産友社会保険労務士事務所。☎048(296)2075、ファクス048(296)5914

(2022年10月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ