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特養発 平和への思い 廿日市の清鈴園 「資料室」整備 被爆証言継承と学びの場に

 廿日市市原の特別養護老人ホーム清鈴(せいれい)園は、入所していた被爆者の証言を継承するための平和資料室を園内に整備した。原爆で身寄りを亡くした高齢者たちの老人ホームとして1971年に開園。翌年から毎年8月6日に開いている被爆体験継承に向けた集会での証言集や、開園の経緯を記した資料などを展示している。(永井友浩)

 本館1階の会議室を改装して設けた資料室は約40平方メートル。「鈴の音」と名付け、同園で過ごした被爆者たちの体験をまとめた証言集や原爆に関連する本などを並べている。「ヒロシマに孤老ホームを」と書いた箱を持って広島市の繁華街で同園の建設資金を集めたかつての募金活動の写真、資料も置いている。

 「高齢化が進んで自ら体験を証言できる被爆者が減る中、継承と学びの場にしたかった」と香川誠二園長(67)は話す。資料室は同園の開設50周年記念事業として昨年秋に整備し、新型コロナウイルス感染拡大がやや落ち着いた今年9月下旬に完成式を開いた。

 同園は、西中国キリスト教社会事業団(廿日市市)が第2次大戦に反対しなかった日本キリスト教団の反省を踏まえて開いた。建設費は海外と国内の募金活動で集まった5600万円と国の補助金で賄った。過去51年間の入所者延べ722人のうち200人余りが被爆者で、現在は入所者58人のうち11人が被爆者。かつて渡米してケロイド治療を受けた女性25人の1人も職員として働いていた。

 資料室は今後、8月6日の集会や平和学習に訪れる修学旅行生との交流の場として活用し、新型コロナ感染が落ち着けば一般向け公開も検討する。香川園長は「資料室を通じて入所者の平和への思いを発信したい」と話している。

(2022年10月10日朝刊掲載)

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