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母親 黒い雨遭った可能性 11疾病にかかったと確認 胎内被爆者認定 厚労省が通知

 広島原爆の投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」の被害者救済で、厚生労働省は11日、母親が亡くなっている場合の胎内被爆者の審査方法を関係自治体に通知した。母親が黒い雨に遭った可能性を否定できず、認定要件の11疾病にかかっていたと確認できれば、申請した子どもを胎内被爆者と認める。4月導入の被爆者認定の新基準で想定しておらず、広島県や広島市で審査が滞っていた。(和多正憲、平田智士)

 厚労省によると、おなかにいた子どもが被爆者健康手帳の交付を申請した時点で亡くなっている母親について、当時の居住記録などで黒い雨に遭ったと否定できない▽がんや肝硬変など11疾病にかかっていたと死亡診断書などの公的な文書の写しで証明できる―場合に被爆者として扱い、胎内被爆した子どもに手帳を交付する。文書がない場合、医師や介護職員たちの証言でも可能という。

 併せて、手帳の交付申請中に申請者が亡くなった場合の取り扱いも通知した。従来は申請者の死亡後に審査を終了していたが、今後は死亡後も被爆者として認定の可否を判断する。認定すれば、手帳の交付を決め、申請日に応じて健康管理手当や葬祭料を遺族に支給するという。

 新基準では、黒い雨に遭ったとされる母親が死亡した場合の胎内被爆者の審査を想定しておらず、県と市では63人の審査が保留となっている。また、市によると、新基準に基づく申請が増える中、4月以降に16人が審査結果が出る前に亡くなったという。

 通知を受け市援護課は「被害者救済の範囲が広がったと受け止めている。国の通知を踏まえ、速やかに申請者などに内容を伝え、適切に審査を進めたい」と強調。県被爆者支援課も「多くの人になるべく早く手帳を交付できるように手続きを進めたい」とした。

(2022年10月12日朝刊掲載)

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