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弟の死や抑留 記憶一冊に 世羅郡から旧満州入植の14人に聞き取り 二世ら慰霊祭に合わせ発刊

 世羅郡文化財協会と世羅町などの旧満州(中国東北部)入植者の子どもたちでつくる満州世羅金馬二世の会が、証言集「満州開拓あの時」を作った。終戦の混乱で自決者も出た旧満州の「第二世羅村」の関係者や、旧ソ連によるシベリア抑留の経験者たち14人の証言を掲載。23日に営む慰霊祭に合わせて発刊し、戦争の悲惨さを伝える。

 14人は、世羅郡から入植し、広野を開拓した青少年義勇軍や看護師、当時は子どもだった人たち。足に銃弾を受けながらシベリアから脱走し、中国で8年間の逃避生活をした男性や、旧満州から歩いて帰国途中に2歳の弟を亡くした人たちの手記を収める。シベリアでの強制労働の記憶を基に描いた油絵もカラーで載せた。中国残留孤児やその家族の体験も聞き取った。

 監修する広島大大学院の河本尚枝准教授(社会福祉学)は「女性や当時は子どもだった方の証言は少なくて貴重」と話す。証言を聞き取った同協会の山下義心さん(86)は「どの方も戦争がなければ良かった、戦争が憎いと語った」と話し、世界で戦争が続く中で記憶を伝える意義を強調する。

 A4判、100ページ。1部千円、送料250円。慰霊祭は午後1時半から同町甲山の今高野山で営む。山下さん☎0847(24)0036。(矢野匡洋)

(2022年10月14日朝刊掲載)

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