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「ロシア祭り」 増す重み ウクライナ侵攻続く中 江津で16日開催 命の尊さ 歴史に学ぶ

 日露戦争時、島根県江津市沖で沈没したロシア軍艦の乗組員を住民が助けた歴史を語り継ぐ「ロシア祭り」が今年も同市で16日に開かれる。ロシアによるウクライナ侵攻で両国に多数の犠牲者が出る中、「たとえ敵国であろうとも人命の尊さに変わりはない」との先人の思いを学び、戦争について考える。(土井和樹)

 1905年5月28日、日本艦隊の砲弾を受けて同市和木町沖に漂着したロシア軍艦イルティッシュ号。助けを求めてボートで上陸した200人以上の乗組員は住民に救助され、浜田経由で帰国した。

 救助翌年に始まったとされる住民の集会を源流とする祭りでは、地元の児童が例年、受け継がれてきた台本による群読を披露する。

 「ありゃあ攻めてきたんじゃなあで。降参してきたんじゃ」「子どもたちも水やまきを運びました」「日本とロシアは敵同士だったはずなのに」「目の前で傷ついている人を助けたい」。台本は、突然ロシア兵に出くわした住民の戸惑いなどを表現している。

 今回群読をする高角小の5年生33人は7日、祭りの会場の和木地域コミュニティ交流センターを訪問。伝承に取り組む野田久雄センター長(71)たちの歴史解説を聞き、理解を深めた。保存されているロシア兵の制帽や救命具、当時の新聞記事などの見学もした。

 杉井千真さん(11)は「和木の人だけでなく、素直に助けを受け入れたロシア兵たちも立派だと思う」と感心。河行壮汰さん(10)は「テレビでウクライナのニュースを見る。でも、それぞれは優しい人のはず。話し合える状況になってほしい」と話した。担任の山根一成教諭(48)は「もし身近なロシア人が偏見の目にさらされていたら、和木の歴史を思い出してほしい」と願った。

 祭りは16日午前9時15分から11時前まで。祭りの歴史を紹介するDVDの放映や軽食の販売もある。同センター☎0855(53)3315。

(2022年10月14日朝刊掲載)

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