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原爆症認定「放射線起因性」を削除 厚労省新基準 がん以外3疾病

距離条件は厳格化

 原爆症認定を審査する厚生労働省の被爆者医療分科会は16日、積極認定する七つの病気の「新しい審査の方針」を決めた。うち心筋梗塞など三つの病気について「放射線起因性(原爆放射線と病気との関連性)が認められる」との文言を要件から削除。一方で、「爆心地から約2キロ以内で被爆」に限るなど距離条件を従来より狭めた。来年1月以降の審査から適用になる。(藤村潤平)

 心筋梗塞▽甲状腺機能低下症▽慢性肝炎・肝硬変―の三つの病気については、「原爆投下から翌日までに約1キロ以内に入市」と入市被爆の条件も狭まった。放射線白内障も「爆心地から約1・5キロ以内で被爆」と距離条件をより厳格化した。

 現行の基準では、七つの病気とも「爆心地から約3・5キロ以内で被爆」「原爆投下から約100時間以内に約2キロ以内に入市」で積極認定していた。

 ただ、過去3年間で心筋梗塞は爆心地から1・6キロ以上、慢性肝炎・肝硬変は同1・4キロ以上で認定された事例はない。新方針は「基準を明確化したが、逆に基準内の被爆者はできるだけ認定しようという姿勢」(厚労省)としている。

 このほか、がん▽白血病▽副甲状腺機能亢進(こうしん)症―の三つの病気は、被爆条件はそのままで「原則的に認定する」と表現を変えた。治療の必要がないなどのケースを除けば、これまでもほぼ全員が認定されており、実態は変わらない。

 厚労省によると、今回の基準見直しで、がんや白血病を除く認定者数は現行の約400人が将来的に約4400人に増えるという。一方で、新たな手当制度の創設を求める日本被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長は「検証が必要だが、そんなに増えるとは思えない」と反発している。

 原爆症認定制度をめぐっては、国の有識者検討会が4日にまとめた最終報告で、病気ごとに細かい被爆条件を設定するよう提言。自民党の国会議員連盟は、今回の見直しとほぼ同じ内容の提言を厚労省に示していた。

 新たな基準が決まったことを受け、広島市の松井一実市長は「一定の前進。高齢化し、病気に苦しむ被爆者に寄り添った制度となるよう、関係者とともに努力する」とのコメントを出した。

原爆症認定制度
 原爆症認定集団訴訟で国が相次ぎ敗訴したのを受け、2008年4月から現行基準に見直された。爆心地から約3・5キロ以内で被爆などの条件で、七つの病気を積極認定。それ以外は総合判断で認定している。認定されると、医療特別手当として月約13万5千円が支給される。日本被団協は、認定と司法判断になお隔たりがあると訴え、国は10年12月、有識者の検討会を設置。計26回の会議を重ね、最終報告をまとめた。

(2013年12月17日朝刊掲載)

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