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露の侵攻に「反戦の意思」 平和首長会議 独ハノーバー市長ら活動報告

旗を掲揚 加盟増

 広島市中区の広島国際会議場で19日に開幕した平和首長会議(会長・松井一実広島市長)の総会で、国内外4市の市長たちが独自の平和活動を報告した。ロシアによる核兵器使用の危機感が高まるウクライナ情勢を踏まえ、ドイツ・ハノーバー市のベリト・オナイ市長は「首長会議に強い期待がかかっている」と訴えた。(宮野史康)

 オナイ市長は収録した動画を寄せた。ロシアによるウクライナ侵攻の開始時に、「反戦への意思」として市庁舎に首長会議の旗を掲げ、国内で100都市以上が新たに加盟したという逸話を披露。「平和を求める各都市の強い願いを表している」と強調した。

 他の3市は会場で登壇した。カナダ・モントリオール市のアリア・アッサンクルノル市議は毎年開く被爆者の追悼式典を紹介。東京都国立市の永見理夫(かずお)市長は、多摩地域26市による平和文化を広げるネットワークづくりをPRした。

 核兵器禁止条約に言及したのはスペイン・グラノラーズ市のアルバ・バルヌセル市長。欧州の加盟都市と連携して6月にオーストリアであった禁止条約締約国会議に代表を送ったといい「政府に参加を求める世論をつくっている」と述べた。会場から発言したノルウェー・オスロ市のマリアンヌ・ボルゲン市長も禁止条約の署名・批准へ「国政にプレッシャーをかけよう」と呼びかけた。

核兵器の教育 もっと必要 米平和活動家カバッソさん

 米国人の平和活動家ジャクリーン・カバッソさん(70)が広島市を訪れ、19日に始まった平和首長会議の総会に参加した。核超大国で、核兵器廃絶に向けた活動に40年余り携わってきた。「多くの人が核兵器について知らない。教育が必要だ」と力を込める。

 米ニューヨークやカリフォルニア州で育ち、カリフォルニア大を中退後、ボランティアを経て、30代で平和活動家を生業とした。国際的な核兵器廃絶ネットワークの運営に関わってきたほか、2007年から首長会議事務局の広島平和文化センター(中区)の専門委員も務める。

 5歳の時の体験を今も鮮明に記憶しているという。サイレンが鳴り響き、机の下に潜り込んだ。東西冷戦下の1950年代。核攻撃を想定した避難訓練に「強い恐怖心を覚えた」。

 その後も核兵器使用が危ぶまれたキューバ危機やベトナム戦争を米国で目の当たりにした。当時、国内で熱を帯びていた反戦に加え、環境保護や女性解放を訴える運動に影響を受けた。ただ、振り返れば「学校でヒロシマ、ナガサキを学んだ記憶がない」と言い、核の惨禍を学ぶ必要性を痛感する。

 両親はユダヤ人。大量虐殺や戦争という「人類の悲劇」を繰り返さないために行動する大切さを学んだ。「私たちはみんな人間。それを忘れなければ破滅でなく、より良い世界を築く道を選べるはず」と信じる。(小林可奈)

(2022年10月20日朝刊掲載)

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