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核政策 為政者は転換を アピール採択し閉幕 平和首長会議

 広島市中区の広島国際会議場で開かれていた平和首長会議の総会は2日目の20日、核兵器廃絶に向けた共同宣言「ヒロシマアピール」を採択し、閉幕した。ロシアによるウクライナ侵攻で核兵器使用のリスクが高まる中、各国の加盟都市が連携し、核超大国の為政者たちに政策転換を促す。(小林可奈)

 アピールでは、ロシアが核兵器使用の威嚇を繰り返す情勢に触れ「核戦争が勃発するリスクは最も高くなっている。危険な核抑止論が勢いを増している」と指摘。核兵器保有国や「核の傘」の下の同盟国に対し「核兵器廃絶に向けた即時の行動を要請し、為政者の政策転換を促す」とした。

 核兵器使用のリスクを減らす当面の方策を提示。核軍縮の努力を保有国に課す核拡散防止条約(NPT)の完全な履行▽核抑止論からの脱却と核兵器禁止条約の批准▽都市と市民が核攻撃されないように「軍縮と都市」を国連総会の議題にする―など6項目を国連と各国政府に求めた。

 閉会行事で会長の松井一実市長がアピールを読み上げ、拍手で採択した。閉幕後の記者会見で、松井市長は「核兵器廃絶という理想に努力し続ける加盟都市間の連帯を深められた」と強調。副会長の田上富久長崎市長も「都市のネットワーク活動を広げようと確認できた」と総括した。

 広島市での総会開催は前々回以来9年ぶり。オンラインを含め22カ国122都市が参加し、うち9カ国102都市の約180人が会場で出席した。ロシア・ボルゴグラード市のオンライン参加は確認できなかった。次回は2025年に長崎市である。

【解説】具体行動 踏み込めず

 平和首長会議は20日の総会で採択したアピールで、ロシアによるウクライナ侵攻と「核の脅し」への危機感を示した。ただ、加盟都市で結束しての新たな行動には慎重姿勢がにじんだ。

 アピールでは、国連総会で「軍縮と都市」の議論を求めるなど、ロシアによる「武力攻撃」や核兵器使用の威嚇を懸念し、ひとたび核兵器が使われれば犠牲となる都市の視点から、国連や各国政府に当面の方策を迫った。

 一方、首長会議自体が新たな行動を打ち出せたかは疑問が残る。国内加盟都市の総会では、ウクライナ侵攻を巡り加盟都市による行動を促す提案があったが、会長を務める広島市の松井一実市長は「相当慎重にしないと誤解を招く」との認識を示した。アピールには、ロシアを直接非難する言葉も、ウクライナ侵攻に対して首長会議として速やかに実行するような具体的な行動も入っていない。

 総会では広島市の姉妹都市、ロシア・ボルゴグラード市が35年にわたって務めた副会長都市を退いた。対立が激化する国家の壁を越えて、どう核兵器のない、平和な世界に導くか。まさに「都市連帯」の正念場だ。

副会長都市 スペイン・グラノラーズ市長に聞く 加盟数増やし 国へ圧力狙う

 平和首長会議(会長・松井一実広島市長)の副会長都市を務めるスペイン・グラノラーズ市のアルバ・バルヌセル市長(43)が20日、総会で訪れた広島市中区で中国新聞のインタビューに応じた。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界で核兵器使用への危機感が強まっているとして「首長会議の加盟都市を増やし、国家に圧力をかけたい」と語った。(宮野史康)

  ―今回の総会ではどのような成果がありましたか。
 まず核兵器使用のリスクが高まる中で開催できたこと自体が素晴らしい。私たちはロシアの侵攻という困難に直面している。総会では平和文化を世界に広げる必要性を確認できた。文化を通じてより多くの市民を巻き込める。平和の実現は長い道のりだ。一人一人が起こしたさざ波が集まれば大きな波になる。都市はその役割を果たせる。

  ―ウクライナ危機にあって、都市の連帯で何ができるでしょうか。
 戦禍に対し、直接できることは限られる。欧州の加盟都市はウクライナの避難民を受け入れ、住居や教育、医療を提供している。グラノラーズ市を含む加盟都市は、市民社会と連携し、都市への攻撃と戦争に反対する集会に積極的に関わってきた。重要な役割は紛争後にも果たせる。都市の再建への協力だ。

  ―一方、世界では核抑止論も強まっています。
 いま人々は核兵器が最も深刻な問題だと見せつけられている。「核戦争」は人ごとではなかったと気づかされた。かつてないほど市民と都市が国家に圧力をかけている。いまやスペインのカタルーニャ自治州では、核兵器禁止条約を支持する都市の人口が計6割以上になる。首長会議の加盟都市を増やし、国家を動かさないといけない。

  ―都市が国政に影響を及ぼすため何ができますか。
 スペインの加盟都市は昨年から1年間、「禁止条約を署名すべき10の理由」というキャンペーンに市民社会と協力して取り組んだ。毎月、新聞に廃絶を訴える寄稿もした。集会も開いた。長期的には、核兵器廃絶の必要性を理解する加盟都市の首長が、国家の大統領になる日が来るかもしれない。これだけ多くの都市が加盟しているのだから。

(2022年10月21日朝刊掲載)

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