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中沢啓治さん あす没後1年 妻ミサヨさんに聞く

 米国の原爆投下後の広島でたくましく生きる少年を描いた漫画「はだしのゲン」の作者、中沢啓治さん(享年73歳)が亡くなって、19日で1年となる。創作活動を近くで見守り続けた妻ミサヨさん(71)=広島市中区=に、松江市教委による閲覧制限問題や、ゲンが読み継がれる意味などを聞いた。(新山京子)

ゲン閲覧制限「全体見て判断して」

秘密保護法「言論・表現自由奪う」

 ことしはゲンの連載開始から40年の節目の年。一方でミサヨさんは思いもよらぬ形で胸を痛めた。

 松江市教委が「描写が過激だ」として市内の小中学校に図書館での閲覧を制限するよう要請していたことが、8月に分かった。「作品の一部だけで判断するのではなく、全体を通じて夫が何を伝えたかったのか、思いをはせてほしかった」

 中沢さんが生きていれば、特定秘密保護法の成立を絶対許さなかったという。「戦時中のように言論や表現の自由が奪われる可能性があるから」と代弁する。

 中沢さんの実体験を基に描いたゲン。病に倒れ、第2部は未完となった。死後に自宅で見つかった16ページ分の遺稿をミサヨさんは4月、中区の原爆資料館に寄贈した。「被爆者の苦しみを多くの人に理解してほしい」との一念だった。

 ファンになった留学生やボランティアによって、夫の分身であるゲンは多言語翻訳が進む。ことしはペルシャ語版もでき、約20カ国語になった。「原爆の被害に遭っても、たくましく生きるゲンの姿から戦争を経験した子どもたちが希望を持ってくれれば」と願う。

 中沢さんが原作、脚本、監督の3役を務めた映画「お好み八ちゃん」と、中沢さんが被爆体験を語ったドキュメンタリー映画「はだしのゲンが見たヒロシマ」が、中区のシネツイン新天地で上映中。最終日の20日は午後7時から「お好み八ちゃん」を上映後、ミサヨさんや製作関係者が撮影秘話を語る特別企画がある。前売り大人2千円、大学生以下1500円。トモコーポレーションTel082(502)0428。

(2013年12月18日朝刊掲載)

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