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広島拘置所の壁画残して 江戸期の広島城下を描き街に溶け込む 撤去方針 制作の入野さん遺族ら市に要望

 広島拘置所(広島市中区)の建て替えで撤去される外塀の壁画を巡り、制作した画家の故入野忠芳さん(2013年に73歳で死去)の遺族や教え子たちが、保存を求める活動を始めた。壁画を管理する市に25日、要望書を提出。江戸時代の広島城下の情景を描き、30年余り街に溶け込んでいるとして「せめて一部でも保存を」と訴えている。(余村泰樹)

 壁画は、広島城築城400年記念事業として市が東区出身の入野さんに制作を依頼。1989年11月に拘置所外塀の北側から東側を中心に完成した。縦2メートルで、全長約200メートルに及ぶ大作。一帯は武家屋敷跡とあって、江戸時代の本川筋を描いた絵巻「江山(こうざん)一覧図」などの資料を基に、城下の水辺の風景やコイ、風俗を再現している。

 ただ、法務省は24年度以降、老朽化した拘置所を南側の隣接地に建て替え、外塀を取り壊す計画。入野さんの妻の泰子さん(72)=東区=は昨年7月に、市から壁画の撤去方針を告げられたという。これを知った入野さんの教え子や知人から残念がる声が多く寄せられたのを受け、保存活動を決意。この日、教え子の岡部喜久雄さん(73)=中区=と市役所を訪れ、市観光政策部に保存の要望書を渡した。

 泰子さんは近く保存を求める団体をつくる。「壁画は街に溶け込み、夫も強い思い入れがあった。全て残すのは難しいだろうが、部分的にでも保存してほしい」と願う。市は「拘置所など関係者との協議が必要。要望内容を見て検討したい」、広島拘置所用度課は「市から保存の相談があれば、法務省と協議したい」としている。

(2022年10月26日朝刊掲載)

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