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連載・特集

[ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 怒りをつなぎ強い力に 平和運動家 森滝春子(もりたき・はるこ)さん(83)=広島市佐伯区

 ≪被爆者として原水爆禁止運動の先頭に立った故森滝市郎氏の次女。父の背中を見ながら被爆地の反核運動に力を注ぐ。核実験を1998年に強行したインドとパキスタンから若者を広島に招き、2001年には市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」を結成。がん闘病を続けながら活動を率いてきた。≫

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 核使用をほのめかし、力でねじ伏せる―。ロシアのプーチン大統領は帝国主義的野望のために突き進んでいる。今後も何をしでかすか分からない。

 世界は「核抑止」への依存を高めようとしている。核兵器が「威力」としてしか捉えられていない現状に私は立ちすくむしかない。父をはじめ被爆者たちが体験から絞り出した「核と人類は共存できない」「核絶対否定」といった声が共有されていないことに絶望感でいっぱいになる。

 ロシア国民も含め、戦争や核使用に反対する民衆の声はあまり聞こえてこない。声を上げれば弾圧されてしまう状況が世界で生まれているのかもしれない。

 40年前の82年、欧州の反核運動に呼応して父たちが呼びかけた「平和のためのヒロシマ行動」では20万人近くが広島に集結し、すごい熱気だった。戦争の記憶が生々しく、核で無残に命を奪われることへの怒りと危機感が強かった。

 イラク戦争(03年)の前には世界の市民が大規模デモで反戦を訴え、広島市でも中央公園に6千人の市民が戦争を止めたい一念で集まった。運動に関わる人だけでなく、老いも若きも、一人の人間として「ノー」の声を合わせた。

 そんなふうに私たちはもっと怒りに突き動かされていいはずだ。ウクライナでは連日民衆が命を奪われ、故郷を追われた人もいる。原発は占拠され、核使用も懸念される。私は心の底から怒りを感じている。病で体が思うにまかせず、もどかしい。

 ヒロシマの譲れない思いを抑えては駄目だ。怒りや憤りをつないで、この戦争を止める、核を使用させないという強い力にしなくてはならない。(聞き手は森田裕美)

(2022年10月27日朝刊掲載)

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