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社説・コラム

[ザ☆定番!] 園児服(中村被服) ニーズ反映 心込めた縫製

 約300台のミシンがずらりと並ぶ本社工場に生地を縫い合わせる音が響く。保育園や幼稚園の園児服製造でトップ級のシェアを誇る中村被服(防府市)。全国に4万ほどある園のうち約4千が得意先だ。

 顔が見える関係づくりを重視し、顧客を開拓してきた。汚れが落ちやすい素材の採用、けがの多いおでこや後頭部を保護するカラー帽子…。小まめに園を回り直接聞き取ったニーズを商品に反映させる。全ての工程を自社で担い、詳細なデザインや特注サイズにも柔軟に対応する。中村顕社長は「子が初めて社会に出る時に着る服。きちんと用意してあげたい」と語る。

 戦時中、現広島市南区の陸軍被服支廠(ししょう)の指定工場として軍服を作った経験が土台にある。創業者の故中村茂喜氏は「兵隊さんにとって最後の衣装になるかもしれない」と、一針一針心を込めて縫うよう社員に指導した。思いは戦後に始めた園児服にも受け継いでいる。

 分厚い素材も扱える縫製技術を生かし、コンビニやスーパー、医療業者向けの保冷ボックスの生産にも進出。生鮮食品やワクチンなど温度管理が必要な物流を支え第2の柱に成長した。

 来春には創業99年を迎える。中村社長は「園の業務負担を減らすシステム作りも進めたい」と先を見据える。(藤田龍治)

 ≪メモ≫肌着を作る中村メリヤス工場として1924年に防府市で創業。園児服は生活習慣を身に付ける道具でもあると捉え、日々着て社会性やマナーを学ぶ「服育」を掲げる。今年8月には本社工場の隣に園児服の出荷倉庫などを備えた新社屋を建てた。これまでにマツダ車の座席シートや昨年の東京五輪の警備服、布マスクなども生産した。

(2022年10月27日朝刊掲載)

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