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[ヒロシマの空白 証しを残す] 街覆う原子雲・煙 米機撮影 投下4時間後 サミット主会場候補 元宇品上空(2023広島サミット)

 米軍が広島市へ原爆を投下した約4時間後、今の南区元宇品町付近の上空から、原子雲と火災の煙に覆われた市内を撮影した写真が米国立公文書館に残っていた。元宇品町は、来年5月に市内である先進7カ国首脳会議(G7サミット)の主会場候補のグランドプリンスホテル広島の所在地で、爆心地から約5キロ南東にある。1発の核兵器で市街地の広範囲が瞬く間に火に包まれ、無差別に焼き尽くされた実態が伝わる。

 サミットに向け、原爆資料館(中区)の協力を得て同館の収集資料のうち元宇品町と爆心地方面の位置関係が伝わる空撮写真を洗い出した。整理や検証が終わっていないために同館ウェブサイトのデータベース(DB)に掲載されていない写真を含めて調べた。

 米国立公文書館の写真は原爆資料館が2003年にデータを入手し、DB未掲載。中央下に宇品町(現南区宇品海岸)と元宇品町とを結ぶ暁橋付近が見え、爆心地方面の京橋川西側の市街地は一面、雲と煙に覆われている。米軍の写真に詳しい工藤洋三・元徳山高専教授によると、1945年8月6日午前8時15分に原爆が投下されてから約4時間後に写真偵察機が広島上空に到達して撮影をしており、その一枚だという。

 ほかに、米陸軍遺産教育センターも被爆の約3カ月後に元宇品町の南東から同町と市中心部を低空から撮った写真を所蔵している。資料館は19年にデータを収集し、同じくDBにはまだ掲載されていない。同館はこれらの写真について「被爆実態を伝えるために今後順次DBで公開していきたい」としている。(編集委員・水川恭輔)

(2022年10月30日朝刊掲載)

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