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被爆前の広島撮影 オンライン写真展 故松本若次さんの作品 無料公開

 移民先の米ロサンゼルスと被爆前の広島で暮らした松本若次さん(1965年に76歳で死去)が撮影した膨大な数の写真の一部を、ロサンゼルスの全米日系人博物館がホームページ上で無料公開し始めた。孫のカレン・マツモトさん(68)=ワシントン州=たちによる「オンライン企画展」という位置付けだ。

 「松本若次 二つの世界を生きた芸術家 ロサンゼルスと広島」と題し、17~44年撮影の約80枚を公開している。

 広島分は45枚。電車や人々が行き交う紙屋町交差点を捉えた一枚は、後に原爆で壊滅する爆心直下の姿を伝える。市井の人々の豊かな表情が印象的だ。38年の相生橋周辺のパノラマ写真は、原爆資料館(広島市中区)東館の壁一面に展示されていることで知られる。

 ロスの写真は、日本人街「リトル・トーキョー」のパレードや、畑に立つ家族を捉えたカットなど。「日本一の移民県」といわれた広島出身者たちの新天地での日常が、鮮やかによみがえる。広島編、ロス編ともに写真と動画(約3分)で紹介している。近く日本語の字幕を加える。

 松本さんは地御前村(現廿日市市)に生まれ、06年に渡米した。農業に従事しながら写真技術を身に付け、27年に帰郷。現在の紙屋町交差点(中区)付近にスタジオを開業した。42年に店を閉めてプリントを移していたため原爆による焼失を免れた。奇跡的に現存する大量の写真は第一級の資料と評価されている。

 デニス・リード学芸員(76)によると、2020年に館内展示を計画したが新型コロナウイルス禍で断念。カレンさんは米国や広島での企画展を引き続き目指している。「広島で起きたことを忘れてはいけない。核戦争の危機が高まる今こそ見てほしい」。現地時間12月10日にオンラインイベントを開く。日本語通訳付き。 https://www.janm.org/ja/exhibits/wakaji-matsumoto(新山京子)

(2022年10月31日朝刊掲載)

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