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爆心直下の営みに迫る 原爆資料館 島病院資料など展示

 原爆資料館(広島市中区)で、企画展「爆心直下の町―細工町・猿楽町」が開かれている。爆心地周辺にあった医院、商店の関係者たちが保管してきた写真や遺品を通し、原爆で壊滅する前後の街の姿と人々の暮らしを紹介する。来年2月13日まで。無料。

 現在の大手町周辺にあった細工町は、郵便局や病院など洋風の建物が立ち並んでいた。広島県産業奨励館(現原爆ドーム)一帯に広がっていた猿楽町は、下町風情あふれるにぎやかな商店街だった。企画展では「被爆前の街並み」「変わり果てた光景」「再建の歩み」に分け、写真や実物資料、レプリカ約170点を展示している。

 中でも爆心地として知られる島病院(現島内科医院、中区)に関する資料が充実している。1933年8月に開業した病院の設計図をはじめ、当時院長だった故島薫さんが被爆後に書き残した死没者名簿や、慰霊祭で読み上げた弔辞など、初公開の遺品も並ぶ。

 島内科医院の名誉院長で展示に協力した、薫さんの長男一秀さん(88)は「子どもの頃を思い出し、とても懐かしい。父が焼け跡に残した伝言板の写真が胸に迫る」と展示に見入っていた。落葉裕信主任学芸員(45)は「人々が努力し、積み上げた暮らしが一瞬で奪われた。悲しみや痛みを想像してほしい」と話している。(桑島美帆)

(2022年11月1日朝刊掲載)

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