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大和主砲旋盤 船出へ万全 呉での展示へ兵庫で作業

 戦艦大和の主砲を削り出したとされる大型旋盤を、呉市の大和ミュージアム敷地内で公開するために海上輸送する作業が1日、兵庫県播磨町の所有会社の工場で始まった。世界最大級の46センチ砲を製造し、戦後は造船業などの発展に貢献した旋盤が、69年ぶりに大和の古里に戻る。

 同旋盤を巡っては呉市がクラウドファンディング(CF)で輸送設置費などを募り、目標の1億円を大きく上回る約2億7千万円が集まったことも話題となった。

 この日、機械加工の「きしろ」(兵庫県明石市)の播磨工場で、社員たちが九つに解体された部品をクレーンで台船やトラックなどに載せて運び、貨物船へと積み込んだ。2日朝に出港し、同日夕に呉港に到着する見込みという。

 旋盤はシリアルナンバーから「15299機」と呼ばれる。旧海軍が1938年にドイツから購入し、呉海軍工廠(こうしょう)の砲身工場に配置。当時は長さ約40メートルの巨大さで、大和などの主砲の外側を削ったとされる。工作物を取り付ける円形の面盤は直径3・2メートルある。

 53年に神戸製鋼所高砂製作所(同県高砂市)に払い下げられ、96年からはきしろで大型船のクランク軸などを加工した。2013年に新機器と交代するまで現役で稼働していた。05年の同ミュージアム開館を前に呉市が展示を打診していたことから寄贈が決まった。きしろの松本好隆社長は「メンテナンスを繰り返し、長く活躍してくれた主力の機械。実物を見て大和や日本の工業力に思いをはせてほしい」と話した。

 呉市によると、呉港到着後は部品を陸揚げして組み立て、同ミュージアム敷地内で整備が進む展示施設の土台に22日に設置するという。(仁科裕成)

(2022年11月2日朝刊掲載)

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