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続 年金もらい忘れていませんか? 柴田友都 <3> 戦後に会社勤め 記録よく確認を

 広島市のK子さんから電話があったのは昨年12月のこと。94歳で亡くなった義母M代さん=1927(昭和2)年生まれ=の年金相談でした。

 M代さんは戦時中、呉市広にあった広海軍工廠(こうしょう)に勤め、生前に国民年金だけ受給していたそうです。海軍工廠の年金は国民年金に加算されず、さらに厚生年金の加入期間が1年以上ないともらえないという条件があります。戦後、会社勤めをしていないか-。M代さんの夫のB造さんに確認してもらうことにしました。

 翌日、M代さんが結婚前に事務職をしていたとK子さんから連絡があり、B造さんに相談者となっていただくことで調査を始めたのです。約3週間後、K子さんから届いた相談票にはこう書かれていました。「女学校時代に勤労動員で広海軍工廠に出向き、卒業後も終戦まで働いていた。戦後は約3年間、大林組で事務職に従事」

 この情報を基に調査を進めて約3カ月後、大林組広島支店で46(昭和21)年11月~48(同23)年5月の18カ月の年金加入が分かりました。94歳で他界したM代さんの場合、60歳までさかのぼった老齢厚生年金は約200万円。これを夫のB造さんに受け取っていただきました。

 この記録が見つかったことで、戦時中に広海軍工廠で働いていた時の年金も受給要件を満たすため、続けて日本年金機構に申請しました。現在、回答を待っているところです。

 戦時中、広島県には陸海軍などの軍需工場がありました。国民年金しか受給していない人も新たに厚生年金の記録が見つかると、M代さんのように戦時中の旧令共済期間の年金も請求できます。ただ、年金事務所で「もらえない」と告げられることも少なくありません。よく確認しましょう。

 今回のケースは、M代さんの若い頃の話をK子さんが聞いていたのがきっかけです。M代さんは亡くなりましたが、すてきな親孝行だと思います。昔の話によく耳を傾けてください。まだ数多くの未支給年金があるのです。(年金コンサルタント)

柴田さんの連絡先 〒333―0802埼玉県川口市戸塚東4の25の4、産友社会保険労務士事務所。☎048(296)2075、ファクス048(296)5914

(2022年11月4日朝刊掲載)

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