×

社説・コラム

社説 COP27開幕 国際社会の再結束図れ

 地球温暖化対策を議論する国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトで始まった。本来の焦点は大きく二つだった。一つは産業革命後の気温上昇を1・5度に抑える世界共通目標の達成に向け、各国が温室効果ガスの排出削減目標を引き上げられるか。もう一つは温暖化の被害に苦しむ途上国への支援を拡充できるか、である。

 ところがロシアのウクライナ侵攻がもたらしたエネルギー危機が影を落とす。各国で急場をしのぐため「石炭回帰」の動きが出ている。脱炭素にブレーキがかかりかねない状況だ。

 人類の生存を脅かす気候変動を防ぐため、温室効果ガス削減の加速は待ったなしである。各国は再結束し、地球の未来を救う道を探らなければならない。

 2020年に始まった気候変動対策の国際ルール「パリ協定」は気温上昇を「2度未満、できれば1・5度」に抑える目標を掲げた。昨年のCOP26はこれを1・5度に引き上げ、各国が排出削減の目標を表明。二酸化炭素(CO₂)排出量の多い石炭火力発電所の段階的削減などにも合意した。

 CO₂排出量世界2位の米国は当時、パリ協定を脱退したトランプ前政権からバイデン政権に代わり、協定に復帰。排出量1位の中国も石炭の使用量削減を打ち出した。COP26に合わせ両国は温暖化対策に協調して取り組む共同宣言を発表。世界の排出量の4割強を占める二大排出国が動き始めていた。

 こうした流れをウクライナ危機が一変させた。2月の侵攻後、ロシアへの経済制裁が天然ガスなどの供給不安や価格高騰を招き、「脱石炭」の議論を先導してきた欧州などで石炭火力の利用が進む。

 さらに台湾を巡る米国と中国の対立も懸念材料だ。8月のペロシ米下院議長の訪台を契機に、中国は台湾への軍事圧力を強める。ロシアへの対応でも米中の足並みはそろわない。国際協調の機運が著しく低下している中で迎えたCOP27である。

 枠組み条約事務局が10月に発表した報告書によると、各国の目標を合わせても30年時点の排出量は10年比で10・6%増え、今世紀末までの気温上昇は2・5度に達するという。

 各国が目標を引き上げなければ手遅れになる局面であり、COP27では20年代に排出削減を加速させる「作業計画」をまとめる予定だ。厳しい交渉が予想される。何より米中が立場の隔たりを乗り越えて歩み寄り、率先して高い目標を打ち出すことが求められよう。地球の将来に責任と義務を負うことを自覚し、行動してもらいたい。

 気候変動の影響は途上国で顕著に表れる。パキスタンで大洪水が起き、アフリカは記録的な干ばつに苦しむ。これらは「損失と被害」と位置付けられ、議長国エジプトは過去の排出量が多い先進国の資金支援拡充を正式議題にした。分断を招かぬよう先進国側の姿勢が問われる。

 対策が遅れるほど取り返しがつかなくなる。戦争をしたり、緊張を高めたりしている場合ではない。温暖化対策を土台に国際社会が協調機運を高め、実効性ある計画で合意することが求められる。環境破壊の最たるものである戦争を終結させ、抑止する力にもつなげたい。

(2022年11月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ