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社説・コラム

[2023広島サミット] 被爆地開催 結束の場に 英駐日大使 ロングボトム氏に聞く

核軍縮 日本と密接協力

 広島市で来年5月にある先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、英国のジュリア・ロングボトム駐日大使が広島市中区で中国新聞のインタビューに応じた。ウクライナ危機の中で、初の被爆地開催を評価。核兵器保有五大国の一つとして、核軍縮へ日本と協力する姿勢を示した。(金崎由美)

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  ―広島での開催をどう受け止めていますか。
 ロシアがウクライナを侵略している今、岸田文雄首相の地元の被爆地に首脳が集うことには大きな意味がある。人権と民主主義、ルールに基づく国際秩序を守るため団結し、食糧・エネルギー安全保障や気候危機などの世界的課題を討論する場となる。新型コロナウイルス禍を乗り越え、感染症の予防と対策で野心的な計画を打ち出す機会だ。

  ―ロシアのプーチン大統領は核兵器の使用をちらつかせ、どう喝しています。
 主権国家への野蛮な攻撃で、国際法と国連憲章に対する重大な違反である。プーチン氏の核兵器を巡る発言は無責任だ。われわれは岸田氏の(「ヒロシマ・アクション・プラン」などの)核軍縮提案を歓迎しており、サミット議長国の日本と密接に協力していく。

  ―過去の広島訪問は。
 若い外交官(在日大使館2等書記官)として日本語を学んでいた1990年、英国から来た両親と訪れたのが最初だった。原爆資料館(中区)で一人一人の被爆体験に触れた。心に残っているのは、佐々木禎子さんの千羽鶴と、8時15分で止まった時計。人間の被害を知った。

  ―「核兵器なき世界」という目標に英国は賛同しますか。
 長期的な目標として、引き続き全面的な関与をしていく。それは核拡散防止条約(NPT)体制の下、段階的アプローチと多国間の軍縮を通して達成される。

  ―英国を含む核保有国は軒並み核抑止力への依存を強めており、広島からも批判の声が上がっています。
 他国からの極端な脅威が迫り、他の手段では抑止できない場合のために保持している。安全保障環境上、核抑止力を必要とする限り、不可欠であり続けるだろう。英国は同時に、核軍縮に関する一貫した実績を誇っている。

  ―実際は、英国防省が昨年、核弾頭保有数の上限設定を225発から260発に引き上げています。
 他の保有国が英国と同様の軍縮努力をしていないことが背景にある。特に中国とロシアだ。核抑止力が効率的であるためには他国とのバランスも必要となる。

  ―広島へメッセージを。
 昨年、平和記念式典に夫と出席した際に強い印象を受けたのは、被爆者が体験を後世に伝えようとする姿だ。広島と長崎の歴史を繰り返してはならない。外交を通じた平和と安全保障を確保する努力が私自身にできることだと思っている。

    ◇

 サミットに参加する各国と欧州連合(EU)の駐日大使たちに、広島に集う意義や核兵器廃絶への姿勢を順次聞く。

Julia・Longbottom
 1986年、英外務省入省。極東部(後の中国部)部長、駐日公使、領事局長などを経て2021年3月から現職。

(2022年11月11日朝刊掲載)

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