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社説・コラム

天風録 『世界人口80億人』

 50億人目はクロアチアで産声を上げたそうだ。それから35年の月日が流れ、世界の人口はついに80億人に達した。今回の節目の人となったのは、アルメニアの赤ちゃんという。国連の発表らしいが、誰がどう判定したのだろう▲子どもの誕生は喜ばしい。とはいえ80億もの人の暮らしぶりを想像すると心が痛む。富や食料、エネルギーなどを持てる国と持たざる国の格差は広がり続ける。きょうも子どもが数多く亡くなるのだろう。医療を受けられず、あるいは飢えによって▲人口の増加ペースは鈍ってはいるが、15年後に90億人に達し、2080年代に104億人でピークを迎えると予測される。今後も人間はこの星で繁栄を極めそう。だがうまく共存していけるのだろうか▲一方、60以上の国・地域は出生率低下などで人口が減る。現在人口11位の日本もそう。12位エチオピアと約480万人の「僅差」で、13位フィリピンも追い上げる。どこまで減り、どんな社会になるのかと心配になる▲「人新世(じんしんせい)」を脅かすものがあるとすれば新型コロナウイルスなどのパンデミックか。いや一番の脅威は人間の欲望や戦争に違いない。持続可能な社会へ80億人の英知を集めたい。

(2022年11月17日朝刊掲載)

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