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社説・コラム

[2023広島サミット] ヒロシマ 発信に意義 EU次期駐日大使 パケ氏に聞く

NPT 履行は誠実に

 ウクライナ情勢や来年5月に広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)を巡り、欧州連合(EU)のジャンエリック・パケ次期駐日大使が東京都内で中国新聞のインタビューに応じた。ロシアが核の脅しを強める中、「G7首脳が『繰り返すまじ』というヒロシマのメッセージを発信する意義は大きい」と訴える。(編集委員・田中美千子)

  ―大使として何に取り組みますか。
 厳しい国際情勢下、日本とEUの関係は重要性を増している。欧州では戦争が起き、インド太平洋でも台湾海峡を巡る緊張や北朝鮮のミサイル発射が続く。日EUは同じ考え方を共有する戦略的パートナーだ。私も連携強化に貢献したい。

 経済安全保障の観点も大事だ。例えば欧州はガスの供給をロシアに依存してきた。今や燃料は高騰し、消費者が代償を払わされている。半導体なども供給網が偏っている。日本も同じ課題を抱えており、私たちは協力していけるはずだ。

  ―ウクライナ情勢をどう見ていますか。
 ロシアの残虐行為は、人類が築いてきた世界秩序や国連のルールを脅かしている。世界のエネルギーや食料の安全保障も揺るがしており、断じて許し難い。

 EUは必要な限りウクライナ支援を続ける決意だ。6月、申請から約4カ月という異例の早さで、加盟候補国として認めた。これは重要な第一歩で、ウクライナへの連帯を示すための歴史的な決断と言える。

  ―サミットの広島開催をどう受け止めていますか。
 素晴らしい選択だ。まさに今、プーチン大統領が核で世界を脅しているのだから。私自身はまだ訪問できていないが、広島は想像を絶する被害を乗り越え、戦後は「ヒロシマを繰り返すな」と訴えてきた。人類にとって大事なメッセージで、G7首脳があらためて伝える意義は大きい。私も原爆資料館の見学はもちろん、被爆者や市民とぜひ対話したい。

  ―EUには核兵器保有国や米国の核が配備された国が加盟しています。「核兵器のない世界」に賛同しますか。
 核拡散防止条約(NPT)の本質であり、もちろん支持する。ロシアがNPT体制を揺るがしている今、目標に近づくには、この条約を誠実に履行していくほかない。ただ核による防衛についてEU大使である私がコメントするのは、ふさわしくない。むしろ、軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の問題だ。

  ―広島サミットで他にどんな議論を期待しますか。
 気候変動も人類を脅かす喫緊の課題だ。産業革命後の気温上昇を1・5度に抑えるというパリ協定の目標を達成するには、各国が今すぐ、温室効果ガスの排出削減に取り組む必要がある。G7がその先頭に立たなければならない。

Jean-Eric Paquet
 66年パリ生まれ。93年からEU機関勤務。欧州委員会の副事務総長、研究・イノベーション総局長などを歴任し、22年9月から現職。

(2022年11月17日朝刊掲載)

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