×

ニュース

平和への願い 宗派超え 紛争早期収束 共同で祈り 臨済宗佛通寺派とカトリック広島司教区

 ロシアによるウクライナ侵攻で世界情勢が混迷を深める中、臨済宗佛通寺派大本山佛通寺(三原市)とカトリック広島司教区(広島市中区)が合同で世界平和を祈願した。宗派の枠を超えた取り組みの背景にある、双方の教えの共感できるポイントをそれぞれの代表者に聞いた。(山田祐)

 6日に佛通寺大方丈であった祈願。臨済宗佛通寺派の神田敬州宗務総長(58)とカトリック広島司教区の白浜満司教(60)が向き合った。

 まずは佛通寺派の法要で、神田宗務総長を導師に般若心経などを唱えた。続いて仏像の前の台にキリスト像を安置。白浜司教が新約聖書の一節を朗読した。

 最後に神田宗務総長と白浜司教が並んで「祈りの言葉」を述べた。ウクライナでの紛争の早期収束を祈った上で、「この地上から核兵器が廃絶されるべきであると訴え、宗派を超えて活動していく決意を新たにします」と声を合わせた。僧侶や神父に加えて居合わせた一般の人も参列し、約50人が思いを一つにした。

 神田宗務総長が33年前、ポーランドであった宗教指導者たちの会議に随行した際に、カトリック広島司教区の関係者と交流。新型コロナウイルス禍を受けて昨年、神田宗務総長の呼び掛けで、疫病退散と世界平和のための共同祈願を初開催した。ロシアによるウクライナ侵攻を受け今年も実施した。

~双方の教え 共感する点は~

神田宗務総長 生活の身近に「博愛の精神」

 キリスト教、特にカトリックを思うとき、真っ先に浮かぶフレーズが「博愛の精神」です。積極的に社会事業を展開され、福祉や教育、農業に至るまで幅広く手掛けています。人々が教えを身近に感じられる機会が多く、信仰を深めていくことにつながっています。

 仏教はどうしても伝統や文化財など形を重んじるがあまり、実生活から離れていきがちな傾向があります。キリスト教から学ぶべき点は大きいです。

 ロシアによるウクライナ侵攻から紛争は今も継続しています。微力でも手を携えて平和を願う声を上げ続けることが大切です。

 祈りの声が世界を救うと実感したのが1989年の「ベルリンの壁」の崩壊でした。国家の形が変わる大事件にもかかわらず、流血を一切許していません。その背景には、宗教者たちの非暴力への願いがありました。

 今回のカトリックの皆さんとの交流の輪が世界に広がり、あらゆる紛争の終結につながるよう願います。

地域の風土と根付いて一体 白浜司教

 仏教、特に禅宗では一人一人の内面にある仏性を大切にしておられます。坐禅(ざぜん)や修行を通してその仏性に気付き、成長していくのでしょう。人間は神に似せて作られた「神の似姿」と考えるカトリックでも、黙想を通して心の中で神と触れ合います。

 祈りの対象こそ異なりますが、人間の力を超えてはたらいてくださる方を信仰する―という部分でキリスト教と仏教は共通しています。

 日本における仏教の良さは、地域の風土に根付き一体となっている点です。山あいでもあらゆるところに寺院やお墓が溶け込んでいますね。カトリックでも神から与えられた自然を大切にしようと考えますが、仏教は日本人の日常生活の中に深く浸透している印象があります。

 今回の共同の祈りは広島司教区としても力をもらえます。平和の実現という共通の目的に向けて手を携える。それはキリストも仏様も望んでいるはずです。

(2022年11月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ