×

ニュース

被爆地の思い伝えたい 駐アルゼンチン大使 山内弘志氏に聞く 文化や歴史理解し対話を

 駐アルゼンチン大使に12月に着任する広島県府中町出身の外交官山内弘志氏(57)が中国新聞の取材に応じた。中南米の非核兵器地帯条約に加盟する同国には2度目の勤務。岸田文雄首相が掲げる「核兵器のない世界」を見据え、「私が背負う被爆地の思いを伝えたい」と抱負を語った。(中川雅晴)

 核廃絶には「一家言ある国」。アルゼンチンをこう評する。8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で議長を務めた外交官スラウビネン氏の出身国でもある。ロシアが核による威嚇を繰り返し、国際社会に核抑止論が高まる中、「まずは相手国の文化や歴史を理解し、共通の部分に焦点を当てて対話したい」。じっくりと腰を据えた外交姿勢が信条だ。

 京都大に進学するまで府中町で育った。授業で聞いた被爆者の悲惨な体験を胸にとどめ、平和記念公園(広島市中区)や原爆ドーム(同)は「身近な存在」だった。

 マツダ社員だった父の転勤で米デトロイトで暮らした小学生の頃。8月6日に級友から原爆投下をからかうしぐさで「バーン」と声を掛けられた。被爆の実態を知る大切さを感じた原体験だ。

 アルゼンチンに住む約6万5千人の日系人との交流も重んじる。日系人を「両国の架け橋」と考え、地元の広島県人会とも連携して関係を築く構えだ。サッカーが盛んな国柄だけに「国際大会に臨む代表選手の壮行会などを催し、両国の距離を縮めたい」と思い描く。

(2022年11月20日朝刊掲載)

年別アーカイブ