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連載・特集

2023広島サミット 受け入れを前に <3> 国際会議誘致

長年の課題 克服の好機

魅力発信 地元結束が鍵

 空海ゆかりの寺が、普段の荘厳な雰囲気とは打って変わって華やいでいた。10月26日夜、宮島(廿日市市)の大聖院。50人が、ライトアップされた庭園で音楽演奏や市特産のけん玉パフォーマンス、地元食材を使った料理を満喫した。実は、広島市が国際会議などのMICE(マイス)誘致へ開いた模擬パーティー。映像化し、世界遺産の島でできる特別な体験を国内外へ売り込むのに使う。

19年は72件のみ

 広島市では長年、マイス誘致が課題だった。政府観光局によると、新型コロナウイルス禍前の2019年は72件。同じ政令指定都市である神戸市の438件や、福岡市の313件に水をあけられている。大人数を収容できる会議場やホテルの不足、三原市の広島空港、東広島市の広島大キャンパスとの距離など、さまざまな要因が指摘されてきた。

 そんな中、官民で取り組んだ来年5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)の誘致に成功。広島サミット県民会議副会長を務める広島商工会議所の池田晃治会頭は「世界トップレベルの国際会議ができる場所である証明になり、マイス誘致にプラス」と期待する。

 近年のマイスは、文化財や観光施設など特別な体験を演出できる会場「ユニークベニュー」を使う傾向が強い。例えば、京都市なら二条城や東映太秦映画村など。広島市は大聖院や広島城(中区)ひろしま美術館(同)など、広島県内と岩国市に20カ所を設定。これらの魅力を発信する上でサミットは追い風になる。

 広島市MICE戦略担当の松本亜紀課長は「どのような使い方で広島の魅力を発信できるか探らなければ」と受け止める。市では今年10月、大規模会場を備えたホテルのヒルトン広島(中区)が全面開業したのもマイス誘致の好材料だ。

2件から17件に

 都市間競争が激しい中、16年5月に伊勢志摩サミットが開かれた三重県の国際戦略課は「サミットで知名度は確実に上がった」とする。県のマイス開催件数は14年の2件から16年には17件へ伸びた。主会場があった志摩市には16年3月にリゾートホテルが進出。県は4月に課長級のMICE誘致促進監を置くなど、力を入れたという。

 来年もG7交通相会合が志摩市で開かれる。一方で、同課は「参加国以外、特にアジアではそれほどサミットに関心を持たれていない」と分析。サミット頼みにならないマイス誘致戦略の重要性を指摘する。

 国際会議は開催地の検討から決定までに数年かかる例があり、主催者へのサポートも欠かせない。8月に広島市であった国際会議の運営委員長を務めた情報処理学会(東京)の会員で、星槎大大学院の斎藤俊則准教授は、市を選んだ決め手を「開催実績に加え、広島大や行政、観光関連団体など関係者のサポートも大きかった」と振り返る。

 サミット後を見据え広島はどう動けばいいのか―。マイス誘致戦略に詳しいMICEジャパン(東京)の森口巳都留(みつる)社長は「広島でなければ体験できない特別な魅力が必要。サミットという好機に、地元の関係者が連携を深めるのが重要だ」と助言する。(榎本直樹)

(2022年11月22日朝刊掲載)

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