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社説・コラム

[ずばり聞かせて] ウクライナ危機下の米国の対応は 立教大 佐々木卓也教授

久々 国際協調の先頭

 ウクライナに侵攻したロシアが核兵器による脅しを繰り返す中、「世界の警察」を退きつつあった米国が存在感を示している。強大な軍事力を背景にウクライナ支援を続けている。26日に広島市中区である中・四国アメリカ学会の公開シンポジウムに登壇する立教大法学部の佐々木卓也教授(64)=米外交史=に、米国の現状と今後の見通しをオンラインで聞いた。(宮野史康)

  ―ウクライナ侵攻下の米国の対応をどうみますか。
 ロシアのプーチン大統領は、西側が弱体化しているとみて短期間でウクライナを占領できると思い込んだのだろう。ところが、米国と西欧はロシアに対し、非常に強い対抗措置に出た。「国際協調主義」を掲げる民主党のバイデン政権だからこそだ。久しぶりに米国が国際的な強いリーダーシップを見せた。米国第一主義を掲げた共和党のトランプ前大統領では、どうなっていたか分からない。

  ―共和党が伸び悩んだ米中間選挙の結果は、戦況にどう影響しますか。
 中間選挙でウクライナ支援はほぼ争点になっていない。つまり超党派の合意があると言え、基本的にウクライナ支援は継続するだろう。ただ、戦況が膠着(こうちゃく)した時、今のような支援が続くかは分からない。

  ―なぜですか。
 民主党左派下院議員は10月下旬、バイデン氏に書簡を出した。党内の強い反発ですぐに撤回したが、停戦に向けたロシアとの対話と国内の諸課題への対応を求めていた。トランプ氏に近い共和党右派も、ウクライナにつぎ込む多くの資源を国内に振り向けるべきだと主張している。民主党左派と共和党右派に見事なまでの共通点がある。戦争が長期化すると世論の風向きが変わる可能性がある。

  ―今後の焦点は。
 どのような形で戦争を終結させるか、北大西洋条約機構(NATO)内部にも温度差がある。米国のリーダーシップが必要だ。核兵器の使用は絶対に避けなければいけない。ウクライナの反転攻勢が続き、追い込まれたロシアが核兵器を使うシナリオも可能性としてある。政治指導者が合理的に判断しても、偶発的な事態が重なれば核戦争になりかねないことは、キューバ危機が示している。

    ◇

 中・四国アメリカ学会の公開シンポジウムは26日午後2時35分~5時35分に広島大東千田キャンパスである。「変容するアメリカと世界」をテーマに、佐々木教授、広島大の的場いづみ准教授(英文学)、広島市立大の秦野貴光講師(国際政治学)が報告する。傍聴は先着80人で無料。希望者は23日までに、学会事務局を務める広島経済大の山本貴裕教授に電子メールで申し込む。アドレスはtk‐yama@hue.ac.jp

 ≪略歴≫一橋大大学院博士課程単位修得(法学博士)。立教大法学部助教授を経て、01年から現職。日本国際政治学会理事長も務めた。専門は米外交史、日米関係史。北海道岩見沢市出身。

(2022年11月19日朝刊掲載)

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