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連載・特集

2023広島サミット 受け入れを前に <5> 山根健嗣・県民会議事務総長に聞く

地元理解広げ機運醸成

若者の経験 レガシーに

 広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開幕まで残り半年を切った。PRイベントが増え始めた一方で、首脳たちの行動予定や交通規制などの詳細は見えないまま、「想定」で準備を強いられる難しさも見えてきた。広島県内の官民でつくる広島サミット県民会議の山根健嗣事務総長(64)に現状と課題を聞いた。(山本洋子)

応援事業200件超

  -県民会議ではどんな取り組みを進めていますか。
 公式ロゴやポスター、開催までの残り日数を示すカウントダウンボードの掲示など、開催周知の情報発信は徐々に形になってきた。

 広島県と広島市の職員が半々で始まった事務局の態勢は今、他の市町や民間も加わって70人になった。負担金は引き続き、県と広島市で折半している。出身母体も経験も多様だが、活気があってムードは良い。PRに飛び回り、サミット応援事業の認定件数は200件を超え、伸びている。

  -課題は何ですか。
 サミット本体のスケジュールが決まらない中で開催支援を進めるのが最も難しい。安心、安全のために最も費用がかかり、かつ詳細が見えないのが警備とインフラ。警備の人員、関連経費は増える見通しで、予算規模の着地点は見えない。首脳が使う可能性がある限り、道路整備なども「想定」で進めざるを得ない。

 個別事業は、各自治体が議会で必要性を説明し、透明性を担保する。国にも財政支援を求めている。

  -広島東洋カープやサンフレッチェ広島がサミット前後の地元戦を見送るなど民間にも動きがあります。
 ひろしまフラワーフェスティバルの6月開催なども含め、各方面の対応に感謝する。今後、交通総量を抑制したいエリアや時期を示す。平和記念公園(中区)の一部立ち入りや修学旅行の受け入れの制限などを要請する可能性もある。

影響を最小限に

  -サミット主会場の候補地周辺は、生活への影響がより懸念されます。
 元宇品地区(南区)では9月、外相会合(2016年)の時のように住民向け識別カードを配る可能性があることなどについて町内会役員の皆さんと意見交換した。宇品西、東地区や学校についても今後、方針を示し、説明する。可能な限り生活への影響を抑える方向で県警と調整したい。

  -被爆地開催に際し、G7首脳に何を求めますか。
 原爆資料館の見学、被爆者との対話、原爆慰霊碑への献花、平和のメッセージ発信、記念植樹の5項目を国に要望している。首脳の感性をもって被爆の実相に触れてもらうためだ。広島に来て、焼け野原から復興した街の姿を見てもらう今回の機会は非常に重い。政治的に高度な交渉になるだろうが、粘り強く要望し、辛抱強く待つ。

  -開催後を見据え、どんな成果を目指しますか。
 若者たちの経験が最大のレガシー(遺産)になる。高校生向けジュニアサミットの開催や国際交流を計画する。観光振興などの施策も必要だ。全体の経済効果は、外部委託で客観的に算出してもらう。  開催準備も地元の盛り上がりも、まだ道半ば。地域への説明を尽くし、理解を広げながら加速させたい。(おわり)

やまね・たけし
 早稲田大政経学部卒。1982年広島県庁に入庁し、総務局長、経営戦略審議官などを経て2019年退職。中国地域創造研究センター参与、理事を務め、7月から現職。64歳。広島市安佐南区出身。

(2022年11月24日朝刊掲載)

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