×

連載・特集

続 年金もらい忘れていませんか? 柴田友都 <5> 戦前から戦後 年5万円以上の価値

 今回は、予想外の年金が見つかったケースです。呉市のY彦さんの亡父G平さん=1911(明治44)年生まれ=は戦時中、呉海軍工廠(こうしょう)で働いていました。当時の年金についてY彦さんが年金事務所に問い合わせてもはっきりとした返答がなく、昨年11月に調査依頼の連絡を受けたのです。

 Y彦さんに相談書類を郵送して3週間後、返送されてきた書類には呉海軍工廠のほか、G平さんが生前受給していた厚生年金の会社名が書かれていました。調査を進めると、呉海軍工廠時代の39カ月分の年金はすでに支給されていることが分かりました。

 これで調査は終了―。そう思った時、年金事務所の職員に「船員保険らしき年金があります。心当たりはありませんか」と尋ねられました。

 すぐにY彦さんに電話で確認しました。「お父さんは船に乗っていませんでしたか」と。Y彦さんは「そういえば私が小さい頃、父が何年か船乗りをしていました」と思い出してくれました。あらためて私は「親類にも声をかけ、当時の会社名や船の名前を聞いてほしい」とお願いしました。

 後日、「富士丸」という船だったと知らせがありました。この情報を基に調査すると「第一富士丸」と判明し、53(昭和28)年6月~55(同30)年8月の年金記録が見つかりました。これは予想外の結果でした。G平さんは97歳で他界していたので、60歳までさかのぼってもらえる約600万円の年金をY彦さんに受け取っていただきました。

 「たいした年金額にならないだろうから、もらわない」と言う人もいるのですが、決してそうとは限りません。戦時下や戦前戦後の1年分の年金は5万円以上の価値があります。80代、90代まで元気であれば、60歳までさかのぼって数百万円の年金を受給できることもあります。

 私の事務所では「もらい忘れ年金」の調査を主な業務としています。本人が気づかない年金を見つけることもあり、プロでないと探し出せないケースは少なくないのです。(年金コンサルタント)

柴田さんの連絡先
 〒333―0802埼玉県川口市戸塚東4の25の4、産友社会保険労務士事務所。☎048(296)2075、ファクス048(296)5914

(2022年11月25日朝刊掲載)

年別アーカイブ