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2030年までに核廃絶 「グローバルゼロ」が行程案を発表

 核廃絶を訴える世界規模の運動「グローバルゼロ」は29日、ワシントンで記者会見を開き、日米、ロシアなど9カ国の元政府高官らでつくる委員会が2030年までの核兵器廃絶の行程表案をまとめたと発表した。

 核廃絶の多国間協定に向けた行動計画を4段階で提示したのが特徴。オバマ政権発足以来高まる核なき世界への機運を後押しする狙いで、委員会は「どの道をとるか究極的には政治指導者の決断次第だ」と指摘した。

 行程表は (1)2010~13年に米ロが2018年までに核弾頭を各千個に削減することに合意。全核保有国が包括的核実験禁止条約(CTBT)批准(2)2014~18年に核保有国の多国間交渉開始。検証システムを確立(3)2019~23年に各国が2030年までの核廃絶協定に合意(4)2024~30年に核廃絶完了―が主な内容。

 委員会は、1990年代初めに米首席代表として旧ソ連との核削減交渉を担ったリチャード・バート氏が主導。日米ロのほか英国、フランス、中国、インド、パキスタン、ドイツの政府や軍の元高官も参加。日本は福田康夫前首相と佐藤行雄元国連大使が名を連ねた。

 グローバルゼロは昨年12月にゴルバチョフ元ソ連大統領やカーター元米大統領らが発起人となってパリで創設された。

(共同通信2009年6月29日配信、7月1日朝刊掲載)


<解説>反核世論 米露決断促す

■センター長 田城明

 今回提示された「グローバルゼロ」の核兵器廃絶への行程表は、半年前の創設会議で示されたそれより、廃絶時期を5年早い2030年に設定。あらためて人類が直面する核拡散と核テロの脅威を指摘し、その防止のためにも核保有国の政治指導者に核軍縮・廃絶に向け行動を取るよう促している。

 リチャード・バート氏らでつくるグローバルゼロ委員会は、米ソ冷戦終結から今日までの約20年間で、既に米ロで4万個以上の核兵器を廃棄しており、今後2030年までの20年間で残りの2万数千個を解体するのは十分可能であるとしている。

 世界の核兵器の約95%を保有する米ロがまず、それぞれ千個、さらに500個まで減らすという基本的な考えは前回と変わらない。委員会はその実現のために、解体すべき核弾頭数を、米国は現在の年350個から千個、ロシアは450個から1500個まで増やすように勧告。具体的な数字を挙げている点が目新しいといえる。

 すべての核保有国が加わって核兵器を100個からゼロにする過程を、10年から7年に縮めたことも、廃絶時期が5年早まった主な理由である。

 問題は核軍縮・廃絶の行程をいかに実現するかである。「核兵器のない世界の実現」を掲げるオバマ米大統領だが、前途には国内の軍産複合体の抵抗など大きな障壁が待ち構える。ロシアとの軍縮交渉も、米のミサイル防衛(MD)問題などを抱え、なお予断を許さない。

 だが、核交渉の停滞は、さらなる核拡散、核テロの危険を増すだけである。米ロの大幅な核削減に向け、両国首脳の決断が何よりも求められる。そしてその決断を促すのが、グローバルゼロをはじめ、世界中の反核世論の高まりである。

(2009年7月1日朝刊掲載)

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