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社説・コラム

『想』 堀田稔(ほったみのる) 江波山気象館30周年

 広島市江波山気象館は、平成4年6月1日に開館し、今年で30周年を迎えました。

 本館部分は、昭和9年に県立広島測候所(後の広島地方気象台)として建築された建物で、広島市が譲り受け、気象をテーマにした博物館として保存・整備したものです。

 雲の中、落雷、突風等の気象体験や天気予報の現場見学などができる常設展示と、土日祝日等に開催するサイエンスショーやサイエンスワークショップなどが見どころです。近年は特に、防災・減災に関連した情報の発信に重点を置いています。

 広島に大きな被害をもたらした平成26年8月、同30年7月の豪雨は今も鮮明に記憶に残っています。また今後、南海トラフ地震等の大規模地震が発生する可能性があると予測されています。こうした状況を踏まえ、気象庁等のご協力を得て、防災・減災をテーマにした講演会やトークショーを開催しています。

 当館は土石流の仕組みや被害を説明する装置、浸水した扉にかかる水圧を体験する装置、津波が観察できる大型の実験水槽等を所有しており、これらを利用して、災害時に起きる現象を理解していただくイベントも行っています。

 私は広島市役所で災害関連の業務に携わった経験がありますが、全ての自然現象に対応できる砂防ダム等の防災施設を整備することは不可能であり、ハード面での対策には限界があると強く感じました。このため、皆さんには、いろいろな情報を通して日頃から災害に備え、いざというときの行動に生かしていただきたいと考えています。

 当館は気象だけではなく、原爆の実態を伝えるという役割も持っています。原子爆弾の爆風の直撃を受けた建物は、現存する数少ない被爆建物です。また展示している気象台の当番日誌等から被爆当時の様子を知ることができます。

 当館で原爆の実態に触れ、平和の大切さを感じていただきたいと思います。

 以上が江波山気象館の紹介です。ぜひ一度ご来館ください。(広島市江波山気象館館長)

(2022年12月1日朝刊セレクト掲載)

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