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中国5県の2013年回顧

 中国地方5県では2013年、広島の湯崎英彦知事が再選を決め、山口では山本繁太郎知事が緊急入院し、トップ不在の事態となった。島根では中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)2号機の再稼働手続きが始まった。担当記者がことしの各県の県政を振り返る。

広島県

湯崎知事、圧勝で再選

 湯崎知事が11月の知事選で再選を果たした。自民、民主、公明の3党の推薦を得て、共産党推薦の無所属新人との一騎打ち。湯崎県政を信任するかどうかが焦点となる中、9割近い得票率で圧勝した。

 湯崎知事はこの4年間、発信力の強化を掲げ、観光キャンペーン「おしい!広島県」では自虐戦略で全国の注目を集めた。成長性のある企業に投資する官民ファンドの設立を主導するなど、前回2009年の知事選のマニフェスト(公約集)の実現に力を注いだ。

 選挙戦ではこれらの取り組みを実績として訴えた。ただ投票率は過去3番目に低い31・97%。県民の関心は高まらなかった。投資ファンドをはじめ、瀬戸内海への観光客を呼び込む「瀬戸内・海の道構想」や平和実現に被爆地が貢献する「国際平和拠点ひろしま構想」などの具体化もこれからだ。

 一方で、長年の大規模事業の対応にも追われた一年だった。

 山の所有者に代わって森林を育て、伐採収益を分け合う分収造林を手掛けてきた県農林振興センター(広島市中区)が木材価格の低迷で収支見通しが立たなくなり経営破綻。6月、民事再生法の適用を広島地裁に申請した。負債総額は468億円。県が460億円を肩代わりすることが確定した。

 地元の批判を招いたのは、1999年に都市計画決定した広島都市圏東部のJR線の連続立体交差事業の見直しだ。事業主体の県と広島市が8月、財政難を理由に高架化区間を6・3キロから2キロにする案を提示すると、全区間が見送りとされた海田町は反発した。

 12年に埋め立て・架橋計画を撤回した福山市鞆町のまちづくりの協議も進まなかった。

 公約の実現を図りながら、長年の懸案も住民の理解を得て解決の道を見いだす―。それが2期目の湯崎県政のテーマとなる。(荒木紀貴)

山口県

山本知事の入院続く

 山本知事は2度目の予算編成作業の開始を目前にした10月28日、「過労」を理由に緊急入院した。退院時期として当初示した「1カ月後」は果たせず、県政のトップ不在は2カ月にも及ぶ。年明け以降、山本知事の進退問題が浮上するのは避けられない情勢になりつつある。

 健康を不安視する声は昨年7月の知事選前後から出ていた。当選直後には39日間、肺炎や肺気胸の治療で入院。ことし5月には体調を崩し、公務の視察をキャンセルした。県庁内で足元をふらつかせ、発言が途切れる場面もたびたびあった。

 11月末に開会した県議会定例会は37年ぶりにトップ不在で迎えた。最大会派の自民党の要請などを受け、山本知事は藤部秀則副知事を定例会の一定期間に限定して職務代理に任命。藤部副知事たち県幹部は、KC130空中給油機を米海兵隊岩国基地(岩国市)に先行移転させる政府方針の受け入れに道筋をつけるなど、知事不在の影響を最小限にとどめようとしていた。

 しかし年明けには、予算査定や職員人事など2014年度の県政運営の基盤をつくる作業が待ち受ける。中国電力の原発建設計画予定地(上関町)の公有水面埋め立て免許の延長をめぐり、山本知事がことし3月に「1年程度の先送り」を表明した許可不許可の判断も迫られる。

 山本知事は8月の中国新聞のインタビューで「健康には自信を持っている」と強調していた。詳しい病状を説明せず、退院時期も示せない現状とは明らかに食い違う。県民の間でも説明責任を求める声が高まりそうだ。(村田拓也)

岡山県

教育充実へ予算化

 伊原木隆太知事が初めて編成を手掛けた2013年度当初予算。児童生徒の不登校と暴力行為の多さや学力低迷が県の最大の課題となる中、スクールソーシャルワーカーの増員や、全国学力テストの過去問題を使った独自テストの実施などの対策を打ち出した。重点施策のもう一つの柱である産業振興では、鳥取県と東京アンテナショップの共同出店を決定。企業誘致を進めるため新たな産業団地の造成を進める方針も示した。

 このほか計画から20年経過したJR倉敷駅(倉敷市)周辺の鉄道高架化事業は、費用に見合う効果が見込めないとして、高架化する区間の短縮を含めて工法変更を検討し始めた。任期1年目を無難に滑り出した一方、県議会内には「独自色が薄い」との不満もくすぶり続けている。

 10月の岡山市長選では元国土交通省局長の大森雅夫氏が初当選。14年秋にはJR岡山駅(岡山市北区)前に中四国地方最大規模となるイオンモールの大型商業施設開業が控え、県都の姿も大きく変わりそうだ。(永山啓一)

島根県

「再稼働」へ手続き

 全国で唯一、県庁所在地に立地する中国電力島根原子力発電所で11月、2号機の再稼働手続きが始まった。中電から、再稼働に必要な安全審査について申請の事前了解を求められた県は今月24日、同じく立地自治体の松江市とともに「容認」を回答。原子力規制委員会への申請が実現した。

 手続きが進む契機となったのは、福島第1原発事故を踏まえ、規制委が7月に施行した原発の新たな規制基準。2014年1月以降、規制委はこの基準に沿って2号機の安全性をチェックする。県は厳格な審査に加え、原発30キロ圏の鳥取県と両県6市に対し、審査結果を丁寧に説明するよう要請した。審査が終われば溝口善兵衛知事が稼働の判断を問われる可能性もある。

 県東部は、出雲大社(出雲市)の平成の大遷宮に伴う60年ぶりの大改修で観光ブームに沸いた。5月にあったメーンの本殿遷座祭後も、出雲大社と周辺の観光施設は好調。3月に全通した中国横断自動車道尾道松江線の松江自動車道は、広島県からの集客を後押しした。

 7、8月には県西部が集中豪雨に見舞われた。津和野町や江津市、邑南町などで住宅被害のほか鉄道、道路など交通インフラの寸断が相次いだ。JR三江線は来年7月にも完全復旧する。(樋口浩二)

鳥取県

原発対応 改善迫る

 中国電力島根原子力発電所2号機の再稼働をめぐり、県は立地自治体と同等の対応を中電に迫り続けた。

 2011年12月に米子、境港両市とともに結んだ安全協定。トラブル時の原発立ち入り調査など、島根県、松江市並みの権限を求めた県と両市に中電は3月、「改定には応じられない」と回答。運用で「同様の対応をする」と強調した。

 こうした中、平井伸治知事は2号機の再稼働に向けた安全審査の申請を認める一方で、協定に基づく意見表明を留保した。その上で「立地自治体並み」の対応を再び要求。中電から、審査結果の説明とともに、再稼働を判断する際の事前報告にも応じる意向を引き出した。

 10月には、全国で初めて手話を言語として位置付けた条例を施行した。3月の鳥取自動車道の全通や、今月の山陰道の2区間開通で道路網の整備が進んだ年にもなった。(川崎崇史)

(2013年12月28日朝刊掲載)

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