×

社説・コラム

天風録 『ジャイアントロボの記憶』

 ウルトラマンほどではないが、1960年代に子どもたちの心をつかんだ特撮ドラマがある。「ジャイアントロボ」。さまざまな先端兵器を搭載する巨大ロボットが電子頭脳で主人公の少年の命令のみ聞き分け、悪を倒す▲知る人ぞ知る名作として記憶されるのは結末ゆえだろう。実は原子力エネルギーの塊である悪の帝王と戦うロボ。敵を抱えて飛び上がり、自らも犠牲にして宇宙空間に散る。少年の「行くな」の声に、初めて逆らって▲幼心に涙した筋立てを思い出すのは、人工知能(AI)を備えた自律型のロボット兵器の開発が海外の国では進むからだ。人間の指示を基に攻撃の細かい動作は自動的に判断する。まさにジャイアントロボと似ている▲命令に逆らうことは本当にないのか、と心配したくもなる。誤作動にハッカーによるプログラム書き換え。ロボ兵器を迷わせる要因もあるはずだ。かの最終回のように人類を救うならともかく、もし逆ならどうなるか▲拡大する防衛費にAI研究を取り込み、装備開発を加速する政府の思惑も伝えられる。ロボットは世のため人のために。「鉄腕アトム」以来、数々の物語が日本人に育んだ感覚だけは忘れたくない。

(2022年12月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ