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現場報告2013 秘密保護法 島根県吉賀町議会の撤廃意見書可決 大半の自治体は反応鈍く

 与党の強行採決で成立し、政府が13日に公布した特定秘密保護法をめぐり、島根県吉賀町議会(定数12)は撤廃を求める意見書案を可決した。一方、他市町村の議員や首長の反応は鈍い。中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)が立地し、米軍機の低空飛行訓練が頻発する県内の自治体にとって、「テロ防止」や「(安全保障を含む)外交」を秘密指定の対象に含む同法は無関係とはいえない。(石川昌義、樋口浩二)

 「国民の『知る権利』が奪われる」「憲法の基本原則を蹂躙(じゅうりん)する違憲立法」…。安倍晋三首相に提出した吉賀町議会の意見書には厳しい文言が並ぶ。19日の採決の結果は7対4の賛成多数。発議した藤升正夫氏(共産党)は「恣意(しい)的な秘密指定で何が秘密か分からない状況になれば、地方の住民や自治体にも影響は避けられない」と訴える。

共産議員が発議

 自民党系が多数を占める町議会で、共産党議員が発議した議案を可決するのは異例だ。国土交通省を退職後、10月の町議選で初当選し、意見書案に賛成した大多和安一氏は「都合の悪い事を取りあえず秘密にする公務員の組織体質は否定できない」と指摘する。

 反対世論の盛り上がりと与党の強硬姿勢から法案の行方が注目される中、12月の議会定例会で一般質問したり、意見書案などを審議したりしたのは県と19市町村議会のうち出雲、益田、大田市と吉賀町の4議会だけだった。

 10日にあった益田市議会の一般質問。県職労委員長から市議に転じた和田昌展氏は「中国山地での米軍機訓練の実態も隠されるのではないか」と山本浩章市長に詰め寄った。しかし、山本市長は「判断できる材料を持っていない」とかわした。

 大田市の竹腰創一市長も市議の質問を「国レベルで議論されるべき事柄」と突き放した。5日の記者会見で島根原発の情報公開への影響を問われた溝口善兵衛知事は「法案と直接関係あるんですか」と質問を返した。

 県民の質問への回答を掲載する県ホームページの県民ホットライン。テロ対策の必要性を問う質問に県警警備部は「(米中枢同時テロの発生以降)ライフル銃、サブマシンガン、耐爆・耐弾仕様の車両等を装備した銃器対策部隊を常駐させ、24時間態勢で警戒警備を行っています」と回答している。

テロ防止の対象

 原発が「テロ防止」の警備対象であることは厳然たる事実だ。「テロ防止」も対象に含む特定秘密について、県警は情報漏えいを取り締まる立場にある。しかし、県議会は特定秘密保護法の影響を正面から議論しなかった。

 しまね地域自治研究所(松江市)の保母武彦理事長(71)は「情報が閉ざされては住民同士の建設的な議論はできず、健全な地方自治は成り立たない」と指摘。「住民の安全に関わる原発の情報が国から出てこない恐れもあり、県内の首長は影響と対策を真剣に考えて政府をただすべきだ」と訴えている。

(2013年12月30日朝刊掲載)

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