×

連載・特集

[ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 「核には核を」許されぬ 元自民党幹事長 古賀誠さん(82)=福岡県みやま市

 ≪自民党幹事長などを歴任。「軽武装・経済重視」を掲げる伝統派閥宏池会の会長を6年余り務め、広島選出の岸田文雄首相に継いだ。4歳で父親を太平洋戦争の戦地となったフィリピンで亡くした体験から、政治信条の柱に据えたのは「平和」。イラクに自衛隊を派遣する2003年の特別措置法の採決で退席するなど「戦争につながる」ことにノーを貫いた。≫

動画はこちら

 ロシアがウクライナに攻め入って戦禍が続いている。戦術としての核兵器の使用は現実問題としてはあり得る。だが、ひとたび核戦争になれば、勝者も敗者もない。地球が滅びる。人類を挙げて阻止することが、今を生きるわれわれの責任ではないか。

 核には核を―。世界で強まるこうした議論は決して許されない。日本は初めて核兵器の惨禍にさらされた、たった一つの被爆国。世界に核の恐ろしさ、愚かさを発信する責務がある。

 太平洋戦争でどれだけの血と涙が流れたか。日本遺族会の会長として、肉親を失った悲しみに触れてきた。被爆地を背負う岸田首相が今、国民を守るため、防衛力を「抜本強化」するという。だが、一方が兵器や軍事力を強めれば相手はさらに上回ろうとする。抑止は利かず、際限のない競争になる。

 北朝鮮がミサイルを撃つ、ロシアがウクライナを攻める。そんな現実があっても、政治は平和という理想を実現するためにある。首相は国民をこう説得してほしい。

 日本には先の大戦の反省から生まれた憲法9条がある。戦後外交ではこの9条と日米安全保障条約、二つの中心が均衡を保ちながら平和を維持してきた。まさに故大平正芳元首相が唱えた「楕円(だえん)の理論」だ。この思想を大切にする時だ。(聞き手は樋口浩二)

(2022年12月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ