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社説・コラム

天風録 『核戦争の脅威と「賢人」』

 宇宙に活動が広がると聞くと、夢のある話のようだがむしろ逆である。航空自衛隊の名を「航空宇宙自衛隊」に改めるという。はるか頭上を飛ぶスパイ衛星の監視や最新の人工衛星でミサイル探知など任務は重い▲68年前に自衛隊が発足して以来初めて。宇宙空間は安全保障の新領域だ。国境がなく、新「空自」の持ち場は無限に広がり、大変だろう。防衛費拡大へ、いずれ増税が打ち出されないか。こちらの青天井は許されない▲頭上も気になるが、地上ではロシアのウクライナ侵略など、きょうも戦争が続く。「核戦争の脅威が高まっている」。人類が今まさに危機的状況にあると語ったのは、プーチン氏。核使用をほのめかし、脅威を高めた張本人でありながら、よく言えたものだ▲核兵器のない世界に向けた「国際賢人会議」があす広島で始まる。保有国と非保有国の有識者らが被爆地で協議する。「賢人」でなくとも、核なき世界の実現には廃絶しかないと分かるが、どんな結論が示されるのか▲被爆地選出の岸田文雄首相としては力が入るだろう。来年はサミットもある。「橋渡し役」をそろそろ返上して、核兵器禁止条約の「旗振り役」に名を改めてはどうか。

(2022年12月9日朝刊掲載)

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