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国際賢人会議【解説】「核抑止論」脱却の道筋を

 「核兵器のない世界」実現に向けて岸田文雄首相が提唱した国際賢人会議は今後、3年前後かけて議論を深める構えだ。核を巡る国際情勢が複雑さを増す中ではあるが、ロシアが「核の脅し」を繰り返す目下の危機がある。広島で見聞きした原爆の惨禍を出発点に核兵器削減の道筋を早急に打ち出す必要がある。

 「各国の立場を離れた率直な意見交換が『橋渡し役』という大役につながる」。岸田首相は11日に広島市での初会合に出席後、保有国と非保有国の「橋渡し」を問う報道各社の取材に、こう答えた。

 委員には米ロ中など核兵器を持つ6カ国から7人が名を連ねる。残る8人は非保有国だが、うち米国の「核の傘」の下にある日本とドイツが計4人。核兵器禁止条約の賛同国はニュージーランドとインドネシアの計2人しかいない。

 この顔ぶれで、国の立場を超えて知恵を出し合うというなら、まず重視すべきは「核抑止論」から脱却を図る議論ではないか。核兵器に頼ることで相手国の使用を防ぐという抑止の考えに各国が甘んじる以上、削減は容易ではないからだ。

 首相が外相時代に提唱した前身の賢人会議は米ロ間の軍備管理の枠組み修復などをまとめたが、被爆者たちには物足りなさが残った。再び「賢人」たちの会議を仕掛けた被爆国の政府が、米国の「核の傘」の下にとどまり続けるようでは「核兵器のない世界」への説得力は乏しい。率先して核抑止から抜け出す姿勢が求められる。(樋口浩二)

(2022年12月13日朝刊掲載)

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