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社説・コラム

廃絶の取り組み「保有国の義務」 ローズ・ガテマラー元米国務次官インタビュー

 国際賢人会議委員のローズ・ガテマラー元米国務次官が11日、広島市南区で中国新聞の単独インタビューに応じた。核兵器廃絶に向けた取り組みは「全ての核保有国の義務だ」と指摘。核兵器がもたらす惨状を被爆地が伝え続ける重要性を強調した。(小林可奈)

  ―核兵器を巡る国際情勢が緊迫しています。
 ロシアの「核の威嚇」をとても懸念している。ただ、米政府によると、ロシアの核戦力の運用に向けた準備が進んでいる兆候はないという。広島と長崎(への原爆投下)以来、77年にわたって核のタブーは強固なものだった。もしタブーを破れば、ロシアには道徳的な重荷がのしかかる。

  ―2014年の広島来訪時に「(核兵器の)ゼロは可能」と発言しましたね。
 「核兵器のない世界」に向けて行動することは、核拡散防止条約(NPT)の下、全ての保有国の義務であり約束だ。オバマ元米大統領が述べたように、私が生きている間には難しいだろうが、難題が解消し、安全保障が他の手段でまかなえると各国が確信できれば「核兵器のない世界」を実現できるだろう。

  ―被爆地が果たせる役割は何でしょうか。
 広島と長崎こそ、原爆がもたらす惨状を世界に伝えることができる。米国の人は、広島と長崎については知っているが、原爆がどのような苦しみや死、破壊をもたらしたかを深くは理解していないだろう。自らがたどった歴史を世界に発信し続けている点で、広島が果たしてきた役割には感銘を受けている。

  ―来年5月には先進7カ国首脳会議(G7サミット)が広島市であります。
 核兵器の使用が何をもたらすかをG7が深く理解する上で良い機会だ。首脳たちが被爆証言を聴くことができれば、核の危険性の想起につながるだろう。

(2022年12月13日朝刊掲載)

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