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広島文学資料館を検討 市図書館再整備 議会に説明へ

 広島市中央図書館(中区)が所蔵する3万点以上の「広島文学資料」を巡り、市が同館の移転候補先とする商業施設エールエールA館(南区)とは別に、文学館の整備も視野に検討することが分かった。ただ、具体策は決まっておらず、検討の行方が注目される。(桑島美帆、加納亜弥)

 市は14日にある市議会総務委員会で、中央図書館の移転先をA館とする方針を説明する見通し。その中でA館とは別に、文学館などを設ける必要性についても触れるとみられる。これまで公表していた図書館の再整備方針では、資料が増えた場合を念頭に「拡大措置を別途検討する」との表現にとどめていた。

 広島文学資料は、地元ゆかりの児童文学者鈴木三重吉をはじめ、被爆作家原民喜、原爆詩人峠三吉たち21人の直筆原稿や書簡など3万3526点で、いずれも近現代の広島の歴史を物語る第一級の資料だ。特に原爆文学に関する資料は、海外の研究者の関心も高い。

 現在の中央図書館は専用の収蔵庫を備えておらず、担当学芸員は1人。専門家は「そもそも管理体制が十分とはいえない」と指摘する。商業施設であるA館に移転した場合、古い資料を保管するための温度・湿度管理、防虫対策などを懸念する声もある。

 広島文学資料を巡っては、2001年1月、有識者らが「広島に文学館を!市民の会」を結成し、文学館の設置を求める運動に取り組んだ。しかし、市の反応が鈍かったことから10年に活動を停止した。

 代表を務めた広島大名誉教授の水島裕雅さん(80)=千葉県東金市=は「市が文学館の必要性に踏み込んだ意義は大きい。関係者の高齢化や資料の散逸が進んでおり、一刻も早く実現が望まれる」と話している。

広島市中央図書館の再整備計画
 広島市は2021年11月、中区の中央公園にある中央図書館、映像文化ライブラリー、こども図書館をJR広島駅前の商業施設エールエールA館(南区)に移転する計画を公表。市民の意見を踏まえ、22年9月、こども図書館を現在地に残す方針に転じた。中央図書館については、A館への移転方針を維持する見通し。

(2022年12月13日朝刊掲載)

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