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連載・特集

[SDGsひろしまファクト] 核兵器廃絶 未来のために

広島と世界の連帯 広島発、平和発信の軌跡 次代へ継承 若者の取り組み

 SDGs(持続可能な開発目標)の広島県内のいまをみる「SDGsひろしまファクト」は最終回です。目標16「平和と公正をすべての人に」と目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」がテーマ。平和と核兵器廃絶のメッセージを世界へ発信してきた被爆地広島の取り組みです。(服部良祐)

 SDGsは、目標16の中で「あらゆる場所における暴力の減少」を掲げていますが、核兵器の廃絶について具体的な記述はありません。広島県はSDGsに続く「ポストSDGs」として、原爆投下から100年となる2045年に「核兵器のない世界を実現する」という目標を立てています。

 「核廃絶なしに、真に持続可能な地球と人類の未来は実現し得ない」。広島県の湯崎英彦知事はことし8月、核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせた国連本部でのシンポジウムで長崎県知事と共同で発表しました。

平和首長会議
 世界中の都市が連帯して核兵器廃絶を目指す機構で、広島市に事務局を置いている。1982年、荒木武広島市長(当時)の国連での提唱が発足のきっかけとなった。

広島大平和センター 川野徳幸センター長 理想を訴える正念場

 広島は長く、平和と核兵器の廃絶を世界に訴えてきました。しかしいま、ウクライナで悲惨な戦争が起き日本国内からでさえ核兵器の共有を主張する声が聞こえます。広島大平和センター(広島市中区)の川野徳幸センター長は「ヒロシマが理想を訴える正念場を迎えている」と説きます。

 平和と核兵器に対して、多くの日本人は「理想」と「現実」という矛盾の間で揺らいできました。核なき世界や国際協調主義を理想として掲げる一方で、米国の「核の傘」の下にあることを受け入れる人は少なくありません。ウクライナでの戦争を見たことで、武力増強や核抑止論(核兵器の所有が戦争抑止になるという説)を支持する人が増えています。

 今こそ「理想」を掲げる意義があります。SDGsの目標の中には、「一人も取りこぼさない」とする理想から、現状はまだ遠いものも少なくありません。だからといって「理想は必ずしも目指さなくてもいい」と割り切ってしまったらSDGsのゴールは達成できません。核廃絶も同じで、少しでも是正されるよう努力することが重要です。

 広島と長崎は、核兵器の惨禍を二度と起こさないための最後のとりで。原爆とは何だったのか、人間に何をしたのか、私たちが問い続ける必要があります。原爆投下から77年が過ぎ、被爆者の高齢化も進んでいます。原爆の記憶と核廃絶の誓いを継承しなくてはなりません。ヒロシマの役割はさらに重要になっているのです。

グラフィック・大友勇人

(2022年12月15日朝刊掲載)

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