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バウムクーヘンと広島 ミュージカルに 巣山ひろみさんの児童書原作 東京で3月 似島の歴史伝える

 児童文学作家巣山ひろみさん(59)=広島市佐伯区=が2年前に出版した児童書「バウムクーヘンとヒロシマ」(くもん出版)の物語が、ミュージカルになることが決まった。東京都などが主催する「都民芸術フェスティバル」の一環で、来年3月26~30日に東京・六本木の俳優座劇場で上演される。

 小学6年生の主人公・颯太は夏のキャンプに訪れた似島(南区)でバウムクーヘン作りを体験し、ドイツ出身の菓子職人カール・ユーハイムの半生を知る。第1次世界大戦中に島へ収容され、日本で初めてバウムクーヘンを焼いたといわれる人物だった。そして物語の終盤、原爆投下の直後に負傷者が次々に運び込まれた似島の惨状と、家族を失った祖父の体験を聞く。

 巣山さんが郷土史家や被爆者に聞き取りを重ね、子どもたちが戦争を身近な問題として考えられるよう物語を紡いだ。昨年、東京の舞台制作会社オールスタッフの中島康江さん(53)がインターネットを通じてこの作品を知り、劇場化を思い立ったという。

 「カール・ユーハイムの波瀾(はらん)万丈な人生と似島の歴史は、広島の外では知られていない。平和の象徴であるお菓子を通し、カールさんの思いを伝えたい」と中島さん。ユーハイム夫妻には、俳優の財津優太郎さん(23)と上原りささん(31)を起用する。巣山さんは「核兵器の脅威が現実味を帯びる今、たくさんの人に見てほしい」と願っている。(桑島美帆)

(2022年12月16日朝刊掲載)

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